ドイツ、ラーテノー(RATHENOW)、ワインバーグ(Weinberg)公園内のハーベル(Havel)川にかかる歩道橋です。
。。で。。コレ。。どうなっているのでしょう?
同地で行われたガーデンショーを機に建設されたものです。
ゆるやかにカーブする歩道面を傾斜したアーチが吊っています。
一番の特徴は、アーチの吊り材が床(デッキ)面を直接吊るではなく、デッキから飛び出した腕=梁材の先端を吊り上げているということ。
パッと見は「コレ、どうなってんねん?」と思わずにはいれません(*O*)
下図は中央位置での断面図です。デッキから飛び出した片持ち梁の先端をアーチが吊っています。
下記は応力図:力の流れの概形です。
まずデッキ(床面)の重さWが下方に作用します。
この重さは片持ち梁により左端までせん断力により伝達されます。Q=W、です。
せん断力は必ず曲げモーメントを引き起こしますから、それが図のように生じます(M CG)
片持ち梁の左端のせん断力Qはアーチの吊り材で引き上げられ(T)、それがアーチにより左右のアーチ端まで伝えられます。
これによりデッキが支えられています。
ここで注意深く見ると以下のことに気づきます。
「ん?MCGは何と吊り合ってんの?」
そうです。MCGの相手が見当たりません。
これは以下に示すような「リングガーダー効果」で処理されています。
上図は橋を真上からみた平面図です。
便宜上、先ほどのMCGを図中赤矢印で示します。
これに対し、床面はカーブしているので図のような、MaとMbがあれば釣り合います。
図中に示すように矢印3つが閉じますから、釣り合っているということです。
MaとMbは(曲がった)デッキの軸方向の曲げモーメントです。
これにより、デッキの、ねじれモーメントではなく、軸方向の曲げモーメントでMCGに抵抗させることができます。
実際はこの片持梁が何本もデッキに刺さっているわけですが、全てこの原則で力が処理されています。
これにより合理的に力を処理することができます
リングガーダーについては本サイト内のコチラのページ内のスライドで詳しく説明していますのでご覧ください。
シュライヒ事務所はリングガーダーを多数採用していますが、アーチ橋でやったのは初めてではないでしょうか。
ところでこの橋、床がアーチ状に曲がっているのですが、これと類似の構成ものが、本サイトで取り上げたゲーツヘッドミレニアム橋。
上記ページ内で述べたのですがゲーツヘッド橋はドラマティックな開閉法と裏腹にアーチは少々無理をしています。
下図、左のゲーツヘッド橋は、アーチの吊り材がカーブしたデッキに直接取り付いています。これにより上側に示すように吊材の方向=引張り力の方向はアーチがある方向とは外れます(右写真)。
これによりアーチには曲げモーメントが生じてしまい、それに耐えられる強いアーチの必要があります。
これに対し、今回のワインバーグ橋は片持ち梁を出すことで吊り材の方向はアーチの方向と一致し、結果、アーチに曲げモーメントは生じず、経済的な断面とすることができます。逆に言うと、その位置まで片持ち梁を延ばす、ということです。
パッと見、この橋、どうなっているか分かりませんでした。
リングガーダーをアーチ橋に使うとは考えつきませんでした。
さすがシュライヒ事務所と言う気がします。
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