アウトリガー

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今日は主に高層ビルに用いられる「アウトリガー」について紹介します。

HIGHRIZES.jpg


そもそもアウトリガーOUTRIGGER とは何でしょうか

アウトリガーとはおもに高層ビル(タワー)に用いられるもので、タワーの地震や風によるヨコ方向力による転倒力を補強するものです。

かつて本サイト、コチラのページコチラの補足ページにて軽く解説しました。

以下で説明します。
下図、左側は典型的な超高層:オフィスビルの平面の構成です。
通常、中央にEV、階段室、トイレなどの「中央コア」があります。海外ですと大体RC造です。
これを囲むようにオフィス空間が配置されます。
そして外壁位置に「周辺柱」が並びます。

アウトリガーはこの中央コアと周辺柱を結ぶように(下図赤点線)設けられます。

typicalplan13.bmp

outr-elev11.bmp


右側がそのビル全体の断面図で、コアと周辺柱をつなぐようにアウトリガーを設けます。
アウトリガーは通常、階高1階分(またはそれ以上)の高さを持つトラスです。

アウトリガーの効果は以下の様なものです。
下図はビルの立面図の様子ですが、左側のように細身のビルにヨコ方向力Hが作用すると大きく変形してしまいます。

これに対し、右側図のように腕をのばすようにアウトリガーを張り出し、その下には支えとなる柱を設けます。すると、建物の有効な幅:図下側の緑の矢印の幅が増え、建物の転倒に対する補強をした効果をもたらします。
この結果、ビル頂部のたわみを大きく減らす事ができます。

outrigger11.bmp


そもそも、アウトリガーとは、下図のようにカヌーの横に浮きを張り出して、これによって細い胴体では転倒しやすいカヌーを転倒しにくくなるようにしたものです。

CANOE.png


これらよりアウトリガーのキモ、本質は、外側に張り出しを設けて、これによって転倒に対する有効幅(スタンスとも言う)を増やし、転倒への抵抗力を増やすことです。

日本ではさほどないですが、海外の超高層などでは良く用いられます。

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アウトリガーは建物のどこにどのように設けるのでしょうか。

アウトリガーの位置は本来はどこでもよく、効果のある位置、及び建築計画に支障のない所となります。階高ぶんのトラスで、斜材が横切るのですから人の流れ:動線をふさいでしまう弱点があります。

これより通常は超高層でよくある
「設備階」=床全部に設備が置いてあってふだん人の出入りのない階 や、
「避難階」=海外の法規で要求されるもので、火事などの緊急時に一時的に逃げ込むための階、空間で、普段は使わない階

などに設けられます。

なお、よくある配置例として、建物の一番上:トップに設けられたものはハットトラス、中間部に設けられたものはベルトトラスとも呼ばれます。

out-metaph11.bmp


2つを建物中間に設ける構成もありえるでしょう↓

out-metaph12.bmp


ちょっちセクチー系入ってすまみせん(- -)
子供は見ちゃダメ。 (・・)ノ


アウトリガーを設けるか否かは、中央コアのタテヨコ比が6倍を超えるなら考えた方がよい、と言われています。

アウトリガーを付けた場合、どれくらいタワー頂部の変形が減るかについては、アウトリガーナシを基準にするとおおよそ。。。

A:建物頂部のみにアウトリガー、の場合。。 1/4
B:建物高さ中央位置のみの場合                   1/6
C:建物頂部と中央 つまりA+Bの場合          1/16
                  に減ると言われています

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アウトリガーを設けると建物の応力はどのようになるでしょうか。

超高層ビルを1本の柱だと考えると。。
風圧力などのヨコ方向力Hによりビル全体は転倒モーメントM TOを受けます。(TO=Turn Over 転倒)
アウトリガーがついていると、アウトリガーはM TOと反対方向のモーメント M addを追加します。



outr-mom1.bmp

xmastreelike.jpg
この結果、アウトリガーなしだとモーメントはどんどん増えていき、1階位置では図のM1ぶんのモーメントが生じますが、アウトリガーがついているとモーメントが減りますから、M2のように小さくなります。
(なおM1=M TO   M2=M TO - 2×M add)

このような応力状態はその形から俗に「クリスマスツリー」と呼ばれます。

「メリー・苦しみます!」 「オヤジギャグか!」  (タカ&トシ風)
「メリー・滝川クリステル!」 「お・も・て・な・し・か!」

すみません、ムダなギャグ入りました
構造×お笑いをテーマとしています

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さて、サラっと本サイトのメインテーマ発表しましたが話は戻って。。

アウトリガーはこのように変形を減らし、応力も減らす、非常に優れモノですが、前述のように動線のジャマをする、というのがタマにキズです。
どうにかならないでしょうか。

「シャッチョーさん。。困ってますか?いいのありまっせ!」
「ナヌ?ホンマか。。?」
「ホンマでっせ! ちょっと見ていくだけでもどうですか?」
「ホントだろうな? ウソだったら承知しないぞ ( `_´ )ノ 」
「ウソじゃないですって。 
   はいお客様1名さまごあんな~い!(^▽^*)/」
「 っしゃいあっせ~っ   」

我々と同じことで悩んでたら調子良すぎる呼び込みにつかまった社長さん(ホントは係長止まり)
我々もちょっとその係長。。いや社長の話を盗み聞きしてみましょう。。
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下図はアウトリガー部のビルの部分断面です。
アウトリガーがあると、左側図のようにオフィス空間をぶった切るようにブレースが入ってしまうわけですが。。。


virtural-outr11.bmp


これを右図のように、アウトリガーはヤメて、建物外周のみにまさにベルトを巻くようにぐるっとトラス=ベルトトラスを巻きます。

こうすると以下の作用により、通常のアウトリガーと同じ効果が得られます。


下図、左は通常のアウトリガーの場合ですが、ヨコ方向力Hが働くと、両側の外周柱にNc(圧縮力)とNt(引張力)が働き、これがアウトリガー斜材から中央コアへと伝わってコアを押し戻し、建物モーメントを打ち消す方向のモーメントMaddが作用するわけです。


virtural-outr15.bmp


次に右のベルトトラスの場合ですが。。。
まずベルトトラス付近は、ベルトトラスの壁面4面と、それに取り付く上下の床2面により、ちょうど四角いカタい箱のようになり、一体的に働きます。

これに先ほどと同様に周辺柱に柱軸力が生じますが、その力は上記のハコに作用し、ハコ全体を上図で反時計回り方向に回そうとします。
結果、上下レベルの床は上側は左に、下側は右にとコアを横に押します(F1)。

するとこの床と中央コアはつながってますから、結局上記の横方向力はコアに同じように作用します(F2)。
結果としてこの場合も建物モーメントを打ち消すMaddを生じることになります。

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「スゴいじゃないか」
「でしょ?シャッチョー。NYから仕入れた舶来モンでっせ!」

ふむふむ。勝手に盗み聞きしましたがこりゃ~スゴイ。
カネ払う価値ある話です。
ケド我々は見つかる前にちょっくらトンズラしましょう。。(^^;)
ホントは情報タダ取りはダメっすよ(・_・)

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このように建物内を横切るアウトリガーなしでもベルトトラスをぐるっと巻くことで同じ効果を得ることができ、これを「ヴァーチャル(=仮想)・アウトリガー」と呼びます

上記のように通常のアウトリガーはブレースがコアを押し戻すのに対し、ヴァーチャルアウトリガーの方は間接的にコアを押し戻します。
このため、通常アウトリガーより効きが悪くなります。
しかしそれがゆえむしろ以下のような特徴があります

それは、「効きが悪い」とは「柔らかい」と言うことであり、あまり建物がカタくなると地震力の入力が増える恐れがあるのですが、適度に柔いならそれを回避できるからです。

その他にも。。。

■通常アウトリガーはブレースがコアと接合されるが、コアがRC、ブレースが鉄骨の場合、RCコア内にブレースを受けるための埋め込み鉄骨をするなど納まりが非常に複雑になり、また工期も伸びる。
しかしヴァーチャルアウトリガーではそれらがないので非常にカンタン

■以下で示すクリープに対して有効です。
コアがRC、他が鉄骨だったとします。
RC部材には力が掛かった状態で時間が経つと変形が増える性質があり、これをクリープと言います。

コアがRCですとこのクリープにより、周辺に比べコアだけ下がってしまう恐れがあります。

この時、通常アウトリガーだと、この下がりによりブレース=斜材に圧縮力が生じ、さらに周辺柱も圧縮されることになります。最悪これが原因で周辺柱が座屈する恐れがあります。


creeprelation.bmp

これがヴァーチャルアウトリガーの場合、斜材がないですから、周辺柱への影響はありません。

ただし、床は中央のみ下がることになりますから、これへの対処は必要です

 ヴァーチャルアウトリガーは以上のような長所を備えています。

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なんかヴァーチャル~の方のメリットばかり書きましたが、いずれにせよ、アウトリガーにより、細長~い超高層の性能を改善することができます。




「シャッチョー。エライ詳しいでんな~。
         どこで仕入れた情報だす?(・□・)」

はっ!さっきの呼び込み!
やば。カネ払わないでトンズラしたけど見つかったか。 ヤバす。

けど今まで書いてきたこと。これも実は舶来もんの情報です。


コチラの本、
"Outrigger Design for High-Rise Buildings"
に述べられているものです。
(写真クリックでアマゾンへ)

タイトルは訳すと
「高層ビルのためのアウトリガー・デザイン」


この本、"CTBUH" Council on Tall Buildings and Urban Habitat" = 高層ビル・都市居住協議会という団体が書いたのもの。 つまり超高層のプロたち執筆。
道理で詳しいわけだ(><)

厚さ7mmくらいの薄い本。

上記団体の「アウトリガー・ワーキンググループ」の4人が執筆したものです。
そのうち2人が所属する会社が、今NYでブイブイいわせている(死語)構造設計事務所
Thornton Tomasetti  ソーントン・トマセッティ。オフィシャルサイト

構造専業の巨大事務所でドーハ、NY、中国で超高層建てまくり!
ちなみに前回のtopicsのthe Shed シェッドも。

本の方には現在発展途中の、アウトリガーにオイルダンパーを仕込んでエネルギー吸収するようなものも載ってます。


よろしかったら読んでみてください♫



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