トツゼンですがモデルと言えば誰を思い浮かべるでしょうか
ローラ? 藤田ニコるん? ミランダ・カー?
では建築界の「スーパーモデル」を紹介します
コチラ。 中国南部、広州にある広州タワー。
canton(カントン) towerとも呼ばれます。
canton(カントン) towerとも呼ばれます。
中央がくびれた形態が特徴。どことなく女性の体を思わせるところから通称「super model スーパーモデル」と呼ばれています。
この形態は下図のように直線をねじって作られるHP曲面と呼ばれるものです。
本建物を設計したのはオランダの設計事務所、IBA :Information Based ArchitectureのMark Hemelマーク・ヘメル(右)と Barbara Kuitバーバラ・クート。
二人は同社の協同パートナーであると同時に人生のパートナー。
つまり夫婦。
同社は名前は立派ですが(失礼)、上記2人と2-3人のスタッフがいる小さな事務所。いわば「パパ・ママ・ストア」。
2004年に開かれた広州の設計コンペで優勝し実施設計を勝ち取ったのですが、これまた失礼な言い方をすると、小さな事務所が巨大コンペに勝ってしまった、ということ。
嬉しいのとタイヘンだ、との気持ちがないまぜだったことでしょう
2段階コンペだったこのコンペ。1次審査で残る数案となったことを中国、主催者からの電話で知った二人は大慌て。
二次審査用にキメキメのプレゼ資料を作る必要に迫られ、同時に応募時にはあまり考えてなかった構造実現性についてもその詰めを迫られました。
どうしようか、と考えた挙句、かつてのツテを頼って超大手、オランダアラップに相談することに。
「資金をかき集めたんだ」
プレゼ資料やアラップへの依頼費のために自らの貯金はもちろん、知人などにもお願い。
弱小事務所(失礼)のツラいとこ。
しかも幸か福岡不幸か、クートは2人目の子供の臨月中!
そんな中で作り上げたプレゼ資料をなんとか提出!
負けたら注ぎ込んだお金が全てパーになる恐怖を感じながらも。。見事!優勝を勝ち取りました。
クートはそれとほぼ同時に無事出産。
「パパ・ママ・ストア」にはダブルの喜びとなりました。
施工時はマークがオランダから地球の裏側へ月いち程度の出張。
苦労の甲斐あって2009年に竣工しました。
設計の際のテーマの1つがタワーのお姿。プロポーション。その時の最重要ポイントがくびれたところ、通称「ウエスト」。
それが細い方がキレイに見えることから
「ウエストを極限までダイエットさせろ」が設計の合言葉に。
そのために上図で示すように柱の本数、水平リングの数、上下の円形平面の大きさの比などの数値=パラメータを様々に変化させてその時の応力状態を比較検討することが行われました。
なおこのような検討をパラメトリックスタディと言います。
ウエストが細すぎるとキレイではありますが構造的に弱点となってしまいます。
よってそれを補うためにウエスト部はラチス=斜材を他よりも密に配置しています。
かつてのフランス貴婦人のようにコルセット巻いてくびれをキープしたようなもんですかね(^^;)
タワーは下図の分解図に示すように、
1:外側の白い構造体と、
2:ところどころにあるフロア=レストランや設備スペース、ホールなど、そして
3:中央のエレベータ及び避難階段がある中央シャフト、
の3つから構成されます。
フロアは上下の幾分かにあるだけで、他はスカスカであることが分かります。
外側の構造体は表しであり、構造体でありながらも建築仕上げそのものです。
言ってみればハダカの素の状態!を見みせているようなものです。
えっ、それってハダカのスーパーモデルってこと!?
エッ ホント!? そうなの?
すす、すみません、我を忘れてコウフンしてしまいました。
えっとなんの話だったけ。。あ、そうそう!構造体の話!
このことから構造体の現場ジョイントは通常はボルト接合することが一般的ですが、見た目を考慮してこれはやめ、全て現場溶接!となっています。
その構造体は前出の写真から分かるように3つの要素:
1:タテに通る柱、2:写真で右上がりの斜材、そして3:それらを束ねる水平のリングから構成されます。
さて、本建物で重要なポイントが以下で示す「ノード」です
ノードとは下の写真にある、水平な短いパイプの出っ張りのことです。
本来、構造体はトラス構造ですので先程の3つ:タテ柱、斜材、水平リングが三角形を構成するように1点で交わる必要があります。
しかしそうするとその1点の製作、溶接が複雑になりすぎる恐れがあります。
↓部材溶接前のノード
それを、このノードをタテ柱の内側に付け、水平リングのみはコレに取り付けるようにすることでディテールが遥かに容易になります。
ノードは円形ですから水平リングがどのように取り合ってきても付き方は一緒。あとはそれをタテ柱に溶接すればいいのです。
コチラ、言われてみればああそうか、と思いますが、果たしてそれをゼロから思いつくことができるでしょうか。
「部材が一点に集中して溶接が難しいんです(;´Д`A ```アセ」
「ズラせばよくね?( ´_ゝ`)」 と。
凡人なら「トラスは交点を一致させるのが常識だ。
難しくてもしょうがない、なんとかやってくれ (;´Д`A ```アセ」
と言うのが関の山ではないでしょうか。
常識に囚われたままか、それを超えたアイデアを思いつくか。。。
そこが凡人とそうでない人を区別する分水嶺なのかもしれません
さてこのノード、以下のような副産物、「オマケ」がありました。
それは水平リングが内側に引っ込むことによってタテの柱のラインが強調されるようになったことです。
もし水平リングが柱面についていたらこのようなスカッ!と通るタテのラインは出なかったのではないかと思います。
ちょっとしたディテール:リングは内に引っ込める、というアイデアが建物全体の外観に大きく影響しています。
こういうのが「神は細部に宿る」(ミースファンデルローエ)=ディテールが建物外観を決める、というものです。
こちらの構造設計はアラップ。かのピーター・ライスがレンゾピアノに「ズラしてもいいよ」と言ったと言われています。
シェルの交点をズラすのはアラップでは常套手段なのかもしれません。
さて、ズラすのはいいですが、ではそのノードにはどんな力が働くでしょうか。推測してみます。
通常時、長期的には水平リングには一様な圧縮力または引張力が働いているでしょう。(写真左)よってノードにも単に圧縮または引張の軸力(N)が働くことになります。
風荷重、地震時などでタワーに横方向力が掛かった場合(写真右、H)水平リングはそれによる一方向の力を受け、これをタテ柱に配っていく役割を持ちますから水平のせん断力(Q)および水平の曲げモーメント(M)を生じることとなるでしょう。
長期、上左写真時について補足すると、左図の箸立てのように、そこに箸を入れれば箸は倒れません。当たり前ではありますが箸が箸立ての上端に引っかかって倒れるのを防ぐからです。
カントンタワーの水平リングも同じことでナナメのタテ柱は今にも倒れそうですが、水平リングで留められるため倒れていかないのです。
また、話は戻りますが、ノードにはタテ=鉛直の力は水平リング自重以外は作用しないでしょう。その力はタテ柱及び斜材が受け持つからです。
タテ方向についてはそれらの剛性が強く、わざわざタテ方向剛性の弱い水平リングには力は渡って行かないからです。
最後にいくつか写真を。
夜の「パーティードレス」をまとったときの「スーパーモデル」
夜の「パーティードレス」をまとったときの「スーパーモデル」
屋上にはなんと観覧車が回っているそうです。
「スカスカ」部の見上げ
英語ですが建設工程やIBAの二人の設計風景などを知ることが出来ます。 飛ばし飛ばしでもいいので見てみてください♪
また完全に私ごとですが、youtubeにでてくるアラップ構造担当Joop Paul ヨープポール氏、私が学生の時に大学に留学に来ていた人!
何度かお話したことありましたが。。
ヨープさん、偉くなったんだな~(>□<)
ハダカのスーパーモデルのお話でした。
仕上げ(意匠)なしの建築とも言えます。
まあ建築と女性は似たようなものです。
どゆこと(・□・)?
トツゼンですが「なぞかけ」です
「建築」と掛けて「女性」ととく。その心は?
イショウをまとっていないときがイチバン美しい (意匠 / 衣装)
ねずっちです!
ヤマダくぅ~ん、座布団いちま~い!
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