今日はテニスのお話です
ん?タイトルがおかしい?読んでいくと分かる仕組みです
またまた長らく更新をサボってしまいました。
すまみそん。
今日はテニスと力学、のテーマでのお話です。
まずはコチラ。これがないとテニスできない。ラケットです。
私ごとですが大学4年のときの構造の期末テストで、以下のような問題が出ました。
「テニスラケットを構造力学的に述べよ。」
どゆこと? その心は。。。?
模範解答は
「ラケットのガットは格子梁状になっていて荷重を分散させる」
でした。
テニスラケットの丸い部分をラケットフェイスといいますが、
その面に張ってある糸状のものをガットといい、
そのガットはラケットフェイスにタテヨコに張られています
それによりボールの力はタテとヨコの2方向に分散されることとなります。
ラケットにボールが当たる瞬間をインパクトと言いますが、
そのインパクトと同時にボールの力はタテヨコのガットに作用し、分散されます。
テニスガットは引き伸ばされ、それが縮もうとしてボールが跳ね返される、となります。
ラケットのガットは高張力で張られています。
通常60ポンド(≒27kg)などで張りますが、これはつまり「プレテンションがかけられている」となります。
これはボールのインパクトでガットが引き伸ばされても、すぐに回復(縮む)ようにするためです。
次はテニスラケットのフェイス。 ラケットの「本体部分」のことです。
フェイスは通常楕円形ですが、これは構造力学的には「コンプレッションリング」だと言えます。
コンプレッションリングとは圧縮力のみが働くリングのことです。
曲げモーメントが生じないので効率的に力に耐えることができます。
(ボールのインパクトでガットに張力が働き、それを受けて楕円形のラケットには圧縮力が働く。)
ラケットにはこのようにタテヨコにガットが張ってあります。
一般的に格子梁は短い方に力が大きく流れ、長い方に流れる力は小さくなります。
ラケットの場合、短いのはヨコ糸ですから、そちらに大きく流れそうです。
しかし通常テニスではラケットを短い辺の方向に振りますから、タテ糸をこするような作用が生じます。
これよりガットは先にタテの方が切れる、となります。
(上方向に振ることでタテのガット(赤)の方が擦れて先に切れる)
建築でこの仕組みに近いのがスタジアムなどの円形屋根。
その例としてまもなく完成するラスベガスのスタジアム。
allegiant stadium
中央部、透明部は半透明ETFE膜材
下、左写真でわかるように(クリックで拡大)中央はいわゆる張弦梁状のケーブルガーダーがタテヨコにかかっています。これはラケットのタテヨコに張られたガットに相当するようなものです。
右上写真、中央屋根の外周にかかるトラス状部分がコンプレッションリングで、ラケットの外周に相当します。
本スタジアム、世界で最も高価なスタジアムになるとのこと。
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ラケットのガットは単にタテヨコに張られただけですが、上記のようなケーブルガーダーは膨らんだ断面をしています(下右図)。
(上左、ラケットはガットが少しだけたわむことで力を両サイド=ラケット自身に伝える。
右、ケーブルガーダーはもともとカーブした形態をしているため、それに沿って力が両サイド=コンプレッションリングに伝わる 右下:断面位置)
このようなラケットガットのようなものを専門用語で「幾何学的非線形」と言います。
わかりやすくいえば形が変わることで力を伝達するものです。
逆にケーブルガーダーは形が変わらずとも、元の形が、力の流れに即した形態をしています。
上記の、幾何学的非線形をいかした例が、ヨルグシュライヒ氏が開発した「ケーブルネットファサード」
その処女作がミュンヘン空港ヒルトンホテル(旧ケンペンスキホテル)
アトリウムの端部妻面がガラス壁となっており、ガラス面の風圧力を受ける耐風梁=マリオンが、ラケットのガットと同じ、単にケーブルをタテヨコに張っただけの状態となっています。
ガラス面。 白の雪状のものはガラス面に張られたシール
クリスマスでしょうか(^^)
ディテールがよくわからないので、同様システムの別の例。
こちらのウィキペディアより。
BEIJING POLY PLAZA
上写真のようにケーブルが、テニスガットのごとくタテヨコに張ってあるだけです。交点にはガラスを止める金物があります。
このようなシステムの力の流れですが、下図に示すようにボールの力=緑線に対して、ガットのたわみが小さいと伝える力=赤線が大きくなってしまいますが、たわみが大きけければガットの力は小さくてすみます。
よってなるべくたわんだほうがいい、となります。
(たわみが大きいほどボールの力に抵抗させる力=赤線は小さくてすむ)
上図のように、力の釣り合い=示力図を書いた場合、力=緑線に対し、赤の線の角度が小さい方が、赤の力の長さ=抵抗する力の大きさが小さくて済むからです
これよりなるべくたわませたほうがいいとなります。
しかし風が去ったあとは元通りピン、と真っ直ぐにさせるためにはプレテンションをいれる必要があります。
そうするとそのプレンションを入れるとたわみが少なくなる。
トレードオフ。どっちを取るかとなります。
これらの結果、ヒルトンホテルの場合、強風時のケーブル最大たわみは90cmにもなるそうです(@_@)。
で、ケーブルはそうだとしてそれをどこに止めるの?
ラケットに相当するもの=反力体が必要です。
ヒルトンホテルの場合、ヨコケーブルの両端はRCのホテルで、タテケーブルの上端は鉄骨梁。鉄骨梁はRCほど硬いものでは有りません。
これよりヒルトンホテルではそれらにケーブルを留めた上で、ヨコケーブルを主な耐力材、タテは補助的、としています。
タテの糸はアナタ。ヨコの糸はワタシ。(中島みゆき)
本システムは日本では、シュライヒ氏と親交のある元日大、斎藤教授により改良の上、日本に"輸入"され、「ケーブルグリッドシステム」の名で各地に建設されています。
その例としては銀座にあるヤマハ本社ビルのファサード
ファサードは不透明なパネルですが、これが斜めに張られており、パネル境目に沿ってクロスのケーブルが張られています。
これによりファサードに生じる風圧力を「打ち返す」仕組みになっています。
はっ。この写真見たら。。。。。
オレ、スゴイこと思いついたんだけど。(・□・)
ラケットって、タテヨコにガット張るけど。。。
ななめに張ったら、どのガットも効くからいいんじゃね(・□・)?
ウォー!こりゃー大発明だ~!
さっそく特許申請だ~!
特許料で大金ガッポガッポ。
ザギン(銀座)のクラブでチャンネー(姉ちゃん)はべらせて
毎晩豪遊だ~~~! ピンドン※もってこ~~い!!
うお~!!!
(※ドンペリロゼ。桃色のため通称ピンクドンペリと言われる。
高価なためこれを注文するとチャンネーにメチャクチャモテる。)
。。と喜んだのはほんの束の間でした。
すでに考えていた人がいました。
しかもダイブ前に!
がっかり。たいていのものはすでに世の誰かが考えているものです。
束の間のヌカ喜びでした。ザギンのチャンネーは夢の彼方へ。
なおこのラケット、打球感などにあまり効果がなかったため廃れたそうです。
だから今、見ないのね。
特許とってもたかが知れてたかも。
次はテニスネットのお話。
ネットはこれまた、張力をかけてネットポスト間に張ることとなります。
ネットポストとはネットの両端の柱のこと。
これにより、ネットポストにはどういう力が働くでしょうか。
そう。最も基本的な構造。片持ち応力です。
これに抵抗するため。、ネットポストは同程度の長さ、地面に埋めて抵抗させる、というのが一般的です。
赤線:張力をかけて引っ張る
ポスト(青)には片持ちモーメントM CGが生じる(緑の三角)
黄色矢印:地中で抵抗する
このため、テニスコートを作るなら、ポストを埋め込む深さが必要、ということになります。
まあ屋外なら地面に埋めればいいですからあまり問題ないですが、たとえばシチーホテルの屋上にコートを作ってセレブに彼とテニスしたいわ、なんてなると問題です。
それのために60cm程度のスペースが必要になるからです。
通常はネットポストよりひと回り大きいパイプを60cmほど床に埋めて(=さや管)それにネットポストを埋め込む、となります。
厄介だな。
。。と長年、思っていたのですが、先日、ネットサーフィンをしていたらトンデモナイものに出くわしました。
それがコチラ。
なんと言うことでしょう!
ネットポストの下につなぎ材を設けてそれで片持ちモーメントを処理!
うぉ~~~!!!
つなぎ材を設ければポスト下端の片持ちモーメントはそれにずーっと作用し、処理されますからポストを埋める必要がありません。
コートにぽん、と置けば済みます。
うおーこりゃスゲー!!
いつだったか、仕事中に休日にボケーっとテニスのYOUTUBEを見ていたのですが、突然、このネットが出てきて、私は目がまさに飛び出るかの如く、椅子から転げ落ちるかとばかり驚いてしまいました。
割と長くテニスやってますが、ホント初めて見ました。
めちゃぶったまげた!(@o@)
思えば、このように、床に埋め込むと大変だからなんか考えてくれ、というニーズは長年、世界中にあったわけです。
それを誰かが、構造力学の知識を使って考え付いたんでしょう。。。
それがなぜオレじゃないんだ~!!
今度こそザギンのチャンネーとウハウハだったのに~!
仕方ない。なんか別のテニスの発明するか。
ザギンのチャンネーを簡単にシチーホテルでのテニスに誘える方法とか。
さて最後にテニスのトリビアを。
テニスでは得点の数え方が独特です。
0点はラブ
1点はフィフティーン15
2点はサーティー30
3点はフォーティー40といいます。
ではまずラブはなんで?
これはかつてテニス発祥のころ、フランス語で「卵」を「ラフ」ということから、ゼロ点を「ラフ」と言い、これがなまって「ラブ」になった、と言われています。
「テニスの玉子」というわけです。やっと伏線回収。
ラブラブな、カレシとふたり、ラブ・ゲーム❤(シチーホテルで)
じゃー次。15,30はわかるけど次はなんで45じゃなくて40なん?
これはフォーティーファイブというのが長いので短くしてフォーティーだけが残った、と言われています。
結局は時計の15分ごと、というわけです。
先に4点とるとそのゲームの勝者、ですが、フォーティオール=3対3になると「デュース(ジュース)」と呼ばれ、そこから先に2点連取したほうがそのゲームの勝者となります。
2点連取できず、1対1となった場合、またデュースとなり、以降、どちらかが2点先取するまで続きます。
ジュースが3回続くとこれを「コーラ」と言い、以後3回ごとに「ビール」「ワイン」「ピンドン」となります。
僕はワインまで行ったことがあります。
すみません。これは嘘です。
私ごとですが大学の時はテニス部でした。
4年のときにはテニスで留学しました。
すみません間違えました。テニスで留年でした。 (泣)
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