まず1つ目はLondon Eye ロンドン・アイ
ロンドンアイはテムズ川沿いに立つ観覧車。
イギリスのミレニアム事業の一つとして建設されました。
一般的な観覧車と異なり、リングの片側のみを支持する構造となっています
「一般的な観覧車」の例として横浜のコスモクロック21
話は戻ってロンドン・アイ。
上記解説図にて、観覧車の中央にあるのをハブ、ハブと外周リングを結ぶケーブルをスポークと呼びます。
上図、右下の側面図でわかるかと思いますがそのハブを背面で片持ち状に支持し、前面には何もない、という状態となっています。
川への眺望を望むために川の側に何もないというのは素晴らしいアイデアと思います。
観覧車は両側に支持材がある、という固定概念を打ち破っているからです。
常識を疑って固定概念を破ったアイデアを出し、後は優秀なエンジニアに相談すればいいのです。
ロンドン・アイをデザインしたのは
David Marksデヴィッド・マークスと
Julia Barfieldジュリアバーフィールド
のコンビのMarks Barfield Architectsマークスバーフィールドアーキテクツ。
二人は夫婦。つまりパパ・ママ・ストア。
本プロジェクトは元々1993年のイギリスの雑誌のアイデアコンペへの応募案でした。つまり立つ予定もなかったもの。
しかしコンペ後、二人はこのアイデアを実現させようじゃないか、と一念発起。
努力の末、最終的に二人はスポンサー、つまり金の出どころを確保し、単なる紙の上のアイデアは実現へと舵が切られました。
ゼネコンの協力の下、2000年3月にオープン。
元々は仮設構造物でしたが後に恒久施設として今だ世界中の観光客を飲み込む集客装置となっています。
観覧車のリム=リングの応力はどうなるでしょうか。考えてみましょう。
まず、スポークがなく、6時方向の吊りケーブルのみでハブから吊れた場合(下図左2つ)を考えます。
変形は頂部、時計の12時付近は当然下がり、横:3,9時方向は外へはらみます。
これよりモーメント図もこれに似た形態となります(中央図)。
真下の6時位置は下がらず、あたかも支点があるかのような状態になりますから、他との変位差で大きなモーメントが生じます。
(図、右)これにスポークを張り、さらにプレテンションを与えると、5-7時付近が引張力で車輪重量を負担し、さらに8-10時付近は横へのはらみを抑えるように引き込みます。
この結果、先程のスポークなし時の変形を大きく減らしますから、モーメントも同様に大幅に減らすことができます。
さらにヨコ方向、リングの面外方向の釣り合いも考えてみましょう
ヨコ方向に風圧力が作用した場合、スポークは三角形のトラスを構成するように張ってありますから、風圧力に釣り合うような軸力を発生して釣り合わせることができます。(中央付近、三角形の力の釣り合い示力図)
ここで通常、スポークのケーブルは圧縮力を負担できませんが、予めプレテンションTo(プレストレス)を与えて張っておきます(右上図)。
これにより、圧縮力Cが作用してもまだ残りTの引張力がありますからたわむことはなく、力を負担でき、見かけ上、圧縮力を負担できる圧縮材として作用させることができます。
逆に言うと、あらゆる荷重状態で最大の圧縮力Cを求め、これ以上となるプレテンションToを予め導入する、となります。
例えば設計の段階で
■最初の解析モデルでは、スポークを座屈のない、引っ張りも圧縮も抵抗できる軸力材でモデル化しておき、そのモデルで生じた最大の圧縮力を求め、これ以上プレテンションを与えることとし、
■次のモデルでは引っ張りしか抵抗できないケーブル要素でモデル化して、そのときは上記のプレテンションを与えて解析する、とします。
なお、プレテンションを与えないで抵抗させる方法もあります。
前記の図と同様に横力が作用した場合、引張側スポークは先程と同様に抵抗しますが、圧縮側はプレテンションがないために緩んだとします。
このときはリムが圧縮側の力、Cに抵抗します。
Cは右図のようにリムの分力となり、Cに釣り合うだけの圧縮力CRが作用します。つまりリムは圧縮力が働く圧縮リング(コンプレッションリング)として作用します。
このことにより、先のプレテンションがある場合と同様に横力に抵抗させることができます。
自転車の車輪などはスポークにプレテンションが入っていませんから、上図の仕組みで抵抗するようになっています。
先のプレテンションの場合、入れるべきプレテンションが大き過ぎると各部材の負担が過大となる場合があります。過大なプレテンションのためリムを補強するような本末転倒なことも起こりえます。
このような場合、ある程度の力までに対してはプレテンションで抵抗させ、それ以上の力が作用した場合は圧縮側は緩み、自転車と同じ仕組みで抵抗する、というような方針とすることがあります。
最後、スポークはリングが座屈するのを補強します。
面内、面外方向、いずれにおいても、リムが座屈して変形しようとした時、スポークはこれまでに述べた作用でリングが変形するのを抑え、座屈するのを防ぐ事ができます。
これにより、スポークがないリングに比べて座屈耐力を飛躍的に向上させることができます。
上記の作用は形は違いますが橋、アーチ橋でも用いられています。
アーチは圧縮材ですから座屈しようとしますが、桁を吊るハンガーケーブルが、アーチが変形するのを抑え、このことにより、やはりハンガーケーブルがない場合に比べて座屈耐力を大幅アップさせることができます。
ロンドン・アイの施工で有名なのがリングの施工。
眼前のテムズ側で一旦組み立て、これを「よっこいしょ」と引き上げる方法としています。
なお本件の構造設計はArup で、担当は女性のJane Warnick氏。
マークス・バーフィールドで思い出すのが約25年前に行われた橋のアイデアコンペの優勝案。コチラのページ
アリゾナに架ける橋、というもので脊椎を思わせる三角状のユニットが連なったもの。
コンペばっかりやってたんすかねー。
コチラの構造アドバイスも前出のWarnick氏。
本記事は観覧車のみの記事ではありませんがちょっとだけ寄り道。
コチラは中国、山東省のもの。中央にハブ、スポークがないもの。
SPOKELESS FERRIS WHEEL と言うそうです。 (FERRIS~は観覧車のこと)
コチラの記事など参照。
こちらは我らが日本。東京ドームシティのものですね
これらはハブがないですから車輪を掴んで回す、ということになります
こういうイメージですね↓
。。と思ったらどっちもリムは固定でゴンドラがリム外側のレールを動くとのこと。
失礼しますた。
リムにスポークがないですからこれまで述べたような座屈補強効果がなく、それを大幅に補強せねばなりません。
他にもSPOKELESS FERRIS WHEELでググってみてください
話はガバッと360度変わります。あっ!戻っちゃった!(確信犯)
270度くらいにしときましょう。
バイクです
バイクもさっきの観覧車同様、車輪は両側からのアームで支持するのが普通ですが、最近時々見かけるのが、上の後輪のような、片方からのアームで支持するもの。
なおこの車輪を支持する部分をスイングアームと呼ぶそうです。
よってこの場合「片持ちスイングアーム」となります。
上記写真のサイトによると、このような片持ちの利点は
・レースなどで後輪の交換が容易
・見た目がキレイ
とのことでした。
私、初めてこの形式を見た時、「アーム折れないの???」とびっくりしました。
しかしまあバイクは建築と違ってせいぜい人、ひとりですから、高強度材でも使えば問題ないのでしょう。
後輪が片方だけすり減らないの?まあアームに十分なねじり剛性があるのでしょう。
車輪中央のハブは片持ち梁として働き、アームはねじりモーメントで本体までそれを伝達する、となります。
こちらもロンドン・アイ同様
「スイングアーム1本にして片持ちにしたら車輪交換、楽じゃね?」
と考えた人がエライ、となります。
レースでのタイヤ交換が容易、ということですから自転車に採用されることはなさそうです。
私の方で調べましたがあまりテクニカルなサイトには行き着きませんでした。
コチラのBMWのサイトにCG図などがあります。
バイクのサイトなんて生まれてはじめてググった(・_・)
さて最後も話がガバッ!と変わります。279度くらい。
コチラ↓
やーん 激かわゆす!
カワイ過ぎて悶え死む!
ハムちゃんの回し車も、片面が開いてないとハムちゃん入れませんからそのようなのが好ましい、となります。
この写真出したくて今回の記事を書きました!
(ロンドンアイとバイクはダミー。噛ませ犬。刺し身のツマ)
↓いつもより多く回っております!
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