Good Vibration

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今回は振動に関する話題をお話します


またまた更新が遅れ、約1年!経ってしまいました
すままみません


3つお話します

まず最初は鉄道橋

Talgo.jpg


上記のような、規則的スパンの列柱で支持された鉄道橋=桁橋を考えます。
日本だと通常「陸橋」、英語だとviaductバイアダクトと呼ばれます

taiwanesehigh.jpg



このような桁橋。当然ですが自重や列車の載荷重でたわみが生じています

BULETT.JPG
ここに列車、例えば新幹線が高速で通りかかると。。
鉄道橋に固有な現象が起きます。

仮に新幹線が時速200キロで通りかかって、この時、けた1スパンの通過時間がt、たわみがδだったとしましょう。
すると中の乗客は周期t,振幅δで上下に揺すられることになってしまいます。
最悪、気分が悪くなってリバース!なんてことになってしまうかもしれません。


BULLET2.JPG

これは鉄道橋、特に高速鉄道に固有の現象と言えます。
鈍行列車などでは速度が遅く、tは十分長いでしょう
しかし新幹線などは駅間の高速走行時は200キロなどの固有の速度で動いているでしょう。
これゆえ、高速鉄道の場合のみ、ある一定の高速で走るためこのような現象が起こり得るのです。

このようなことから推測ですが、鉄道橋の許容たわみは極小に、大変厳しく設定されているでしょう。
あるいは意図的に列柱のスパン割りを均一ではなくバラしているかもしれません。



私ごとですが、2年前に近年話題のHyperloopハイパーループの路線橋の設計担当氏のレクチャーを聞く機会がありました。
本現象はこのときに知ったもの。

え?そんなことがあるの?とメチャビックリして目を見開いてしまい、目からコンタクト、じゃない、目からウロコが落ちてしまいました。
ゼンゼン知らんかった。

私は建築関係ですが、建築の上をモノが高速で動いていくなどありません。
激しくダンスして床が振動する、などはありえるでしょうが。
列車が構造体の上を動いていくがゆえに構造体は動かなくても列車の中に乗っている人に振動が起きるという現象です。

メチャビックリ。橋梁設計では常識でしょうか。



次は話がだいぶ変わって昆虫のはなしです
エライ変わるね~


ハチやハエなど小型の昆虫。彼らは飛んでいるときにメチャクチャ早く羽を上下させています。
これは毎回筋肉を振動させて動かしているのでしょうか

これを説明するために、準備知識として以下を説明します。
以下のような「うちわ」を考えます。
うちわの柄の付け根を片手ではさんで、もう片手で柄の先端を1回弾(はじ)くと。。うちわをパタパタと2-3回は揺らすことができます。
これは弾いたエネルギーがうちわの振動エネルギーになるからです。

UCHIWA.JPG
(指で弾くと振動エネルギーがうちわを揺する)

昆虫の羽根もこれと同じ仕組みとなっています。
下図はハチのクチクラと呼ぶ外骨格、胴体の断面概念図です。
下記断面で、青の縦につながるのは背腹筋と呼ばれる筋肉です。なおこれの上側は羽ではなく胴体にくっついています。
羽は下図の2点:ヒンジ位置とてこ支点位置の2点で胴体と接合しています。さっきのうちわと同じです。
この状態で背腹筋をパチンと一回弾けば。。さっきのうちわと同じ要領で数回は羽ばたくことができます。


BEE1.JPG
(背腹筋を1回パチンと弾けば胴体クチクラがバネになって数回振動、羽根も数回羽ばたく)

このことにより、昆虫は実際の羽ばたきよりも少ない回数で筋肉を弾けばよく、言ってみれば「省エネ」をしている、と言えます。

ハチの羽ばたきは100~200ヘルツ、つまり毎秒100-200回、蚊などは1000ヘルツ!とのこと。
彼らはこのような仕組みで高速で動かしているのです。

なお蝶などの低速、10ヘルツ程度の場合は上記のしくみでなく、同じ回数、筋肉を使っているそうです。

詳細は以下のサイトを御覧ください





最後は昆虫からスケールが極度にデカくなって地球温暖化のお話です
エライデカイね~

近年、多く耳にする「地球温暖化」。
二酸化炭素のせいで地球が暑くなる、というものです。
ここにも「振動」が関わっています。

地球は太陽の光を浴びています。
これにより地球の地表が温められると地表は赤外線を発生します
全ての熱を持つ物体は赤外線を発するからです。

これが大気に含まれる二酸化炭素にぶつかることで以下の作用が起きます。

地球の大気中には二酸化炭素CO2、窒素N2、酸素O2、水蒸気H2O、メタンCH4などの分子が含まれます。
これらのうち、異なる原子が結合したもの、つまりN2やO2以外、CO2,H2O、CH4などが「温暖化ガス」として作用します。
これらは異原子の結合ゆえ電気(電子)的な重心の偏りが生じるためです。

赤外線を含む光は電磁波という波ですが、地上から放たれた赤外線がこれらの異原子分子=温室効果ガスにあたると、その波で上記の重心の偏りゆえに分子が振動します。なおこれは分子が赤外線を吸収した状態に相当します。

下記は二酸化炭素が振動する状態の例、つまり「振動モード図」で、下段値は振動の波長を示します。(μmは10^-6乗m、1/1000mm)
mole3.jpg
その後、分子はその振動エネルギーを放出し元の安定状態に戻ります。これは赤外線を「跳ね返した」状態となります。言ってみれば地震で揺れた建物がその振動エネルギーを地面に戻した状態です。

跳ね返した赤外線は四方八方に散りますが一部は地表に戻ります。つまり地表を暖める、という訳です
この結果、地球が一層暖められてしまうというものです。

CO2他、各分子は固有の「固有振動数、固有周期、固有振動モード」を持っています。赤外線は0.7~1000μmの波長をまんべんなく持っていますから(下図)いずれ各分子の波長とどこかで一致します。つまり赤外線で「共振」してしまうのです。
建物が、いろんな周期の地震波のうちのどれかと周期が一致すると共振するように、赤外線という電磁「波」で分子が共振するのです


地球温暖化にも振動が関係していたなんて。。知らんかった。

下図は地球放射のスペクトル図というもので、温室効果ガスが「共振」するものをプロットしたものです。 wikipedia 温室効果より
灰色は吸収、白は通過(透過)を表します。

最上段の赤部は太陽から地球へ入る光で主に可視光線。
青い部分は赤外線のうち水蒸気に吸収されず宇宙空間へ逃げていく部分で俗に「地球放射の窓」と言われます

ちなみに太陽から降り注ぐ光の極大値がちょうど、我々が見える可視光と一致しています。
スゴイ偶然だね~良かったね~
違う違う!逆、逆!
太陽から降り注ぐ光が見える動物だけが生き残ってて、それが我々の祖先だってこと!
太陽が生物に合わせてくれたのではなく生物が太陽に合わせたのです

CHIKYUHOUSYA.JPG

二酸化炭素は共振=吸収するのが大きく3,4つの山しかありませんが水蒸気H2Oは地球放射の窓を除き広範囲:多数箇所に渡っています。
二酸化炭素の大気内割合は0.04%。共振は3箇所。本当に二酸化炭素が温暖化の主因なのでしょうか。雀の涙ほどのCO2を削減したとしてもH2Oの温室効果にかき消されてしまいそうです。
しかしIPCCは二酸化炭素が温暖化の主因なのは間違いない、と主張しています。
「TVで言っている」が本当とは限りません。
私見ではありますが、ほんとにホント?ホンマかいなと思っています。

またついでですが世界のCO2排出の40%は建設業と言われています。
私が購読している海外の建築雑誌には毎回CO2カーボン特集が。同紙は自分が設計した建物が排出するCO2量を計算できるエクセルをタダで配っています。

またオーストラリアではすでに、建物建設による排出CO2量の計算を設計時に行うことが義務になっているとのこと。
日本ではまだ全く音沙汰ないですが、近い将来、排出CO2量を計算し、それに応じ炭素税を払え、という流れは間違いないでしょう。「炭素コンサル」などと言う職種も生まれるかも。

もしアナタが構造解析プログラムを作っているなら、上記を計算する「CO2オプション」の開発を次の会議で提案してはどうでしょうか。時代先取りしすぎかもしれませんが。先んずれば人を制す。





その他。振動のこぼれ情報
■人の胃は「固有周期」が1秒とのことで、これより自動車や船の揺れがこれに合うと胃が揺すられて気分が悪くなり、リバース、となってしまうとのことです。

■人の歩行は2ヘルツ、周期0.5秒ですが、歩道橋を設計する時
・大都会を流れるほどの川幅、100m程度 (パリセーヌ川、ロンドンテムズ川)
・現代的な超軽量構造
としてしまうと上記に共振していしまう可能性が高いそうです。

大都市でよし、オラがクールな歩道橋デザインしたる、と鼻息荒くすると共振してしまい、伸びた鼻をへし折られる、ということです

ロンドンのミレミアムブリッジ、パリのソルフェリーノ橋はいずれも上記の犠牲になってしまいダンパー後付けの憂き目になってしまいました。



今回の記事、それぞれの現象を知ったのは「鉄道橋」は2年前、「昆虫」は15年前、「二酸化炭素」は先月!でした。
3つともどれも目からコンタクト、じゃないウロコ(2回目)、ビックリたまげて椅子から転げ落ちてコーヒーこぼしてアッチッチ、ってなほどの衝撃でした。
運良く振動の共通テーマで括(くく)れる事となり、今回の記事に結実しました。




関連リンク


イーロン・マスク氏が構想するハイパーループHYPERLOOP(英語)




「鉄道橋のデザインガイド: ドイツ鉄道の美の設計哲学」

ヨルグシュライヒ氏著の本で、構造形式など、割と大きな観点のみから記述しています。
訳はシュライヒ事務所に勤務していた増渕氏。不慮の事故により近年早逝しました。
またヨルグシュライヒ氏も先月('21.8月)逝去されました。
ご冥福をお祈りします



 「図解でわかるカーボンリサイクル」(画像クリックでamazonへ)
非常によくまとまった本で、辞書的に使える本です。先んずれば人を制す。
小さい字で大量の情報を詰め込んでいます!
老眼にはキツいかも(笑)

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上記のHPの管理人氏は下記の書籍を刊行しています
「検証温暖化」
カスタマーレビューによると若干ん?な記事もあるようです。
「地球温暖化なんて全部デタラメた!」なんて陰謀論的なものではありませんが。
片目つむって読めばOK?

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あと、タイトルはこちらから取りました。佐野元春。 

 

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