カンポ・ヴォランティン橋

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「白い橋」 サンティアゴ・カラトラバ / ビルバオ・スペイン
Campo Volantine Footbridge:zubi zuri / Santiago Calatrava / Bilbao, Spain

拡大写真はすべてこちら:photo gallery    photo: Mary Ann/Mary Ann Sullivan

真っ白なアーチと繊細な吊りケーブルがビルバオの青空に映えるカンポ・ヴォランティン橋。
地元ではまさに見た通り"zubi zuri"=「白い橋」と呼ばれています


■斜めアーチ

直径264mm、板厚50mmのエレガントな斜めアーチが歩道面を吊っています。 アーチは座屈しないのか心配になるほど細いプロポーションです。

全体構造はオーステルリッツ橋、アラメーダ橋で探求された斜めアーチ構造を採用し、 大幅に進歩されています。

過去作品ではアーチの面外座屈を止めるため、床の吊材を面外剛性を持つ板材としていました。

しかし本橋では、それをペアのケーブルを断面で見たときに三角形状になるように 張ることで、同等の効果を得るように改良しています。(図1)

これにより後のヨーロッパ橋 などにも見られるように格段の透明性、優美さが得られるようになりました。




本橋の建つ地区はビルバオの旧産業区であり、 フランク・ゲーリーグッゲンハイム美術館で有名な 一連の再開発計画の一つとして計画された。

図1. 斜めアーチ橋の吊材


■吊りケーブルが上昇感を演出

床面から伸びる吊りケーブルは一般的なアーチ橋の平行配置とは異なり、アーチ中央へ向かうような配置になっています。
これにより、吊りケーブル全体がアーチ頂上へ向かっていくような上昇感、求心性が演出されています。

なお、この配置によるアーチへの力の入り方のために、そのカーブは図のような、 放物線と三角形の中間のような形態となっています。(図2)

図2. 吊りケーブルの配置と最適なアーチの形態

A:一般的な平行配置:放物線アーチ 
B:ケーブル上端が一点に集中した場合:三角形状 
C:ヴォランティン橋:両者の中間

アーチは通常、荷重による曲げモーメントが生じないようなカーブが採用される。→ケーブルの配置でアーチの形が決まる
本橋のこのケーブル配置は構造的理由でなく、左記の美的理由から 採用したと思われる。


■カーブした床面、トルションチューブ

アーチ同様、歩行面も弓なりにカーブした平面になっています。

この下をアーチ両端を結ぶようにトルションチューブが一直線に走っています。

トルションチューブはアーチが開こうとする力=スラストを打ち消す引張材: アーチタイとしての役割と、床面に作用する非対称荷重をねじれ力 :トルションで抵抗する、という二つの役割を担っています。

平面でみると、トルションチューブの上側と下側の床の面積はほぼ等しく、 これにより非対称による橋自重のねじれ力=トルションは最終的に部材端部では釣り合います。(図3)

橋の自重によるねじれ力はこのように釣り合わせ、歩行者の荷重により生じたねじれ力はトルションチューブで処理します。

斜めアーチ構造では床面に水平力、水平モーメントが作用するため、 これに抵抗する構造が必要です。(アラメーダ橋のページ参照
本橋では床面に水平ブレースを設けて全体を水平な トラスとすることでこれに抵抗させています。

 

図3. 全体の平面図

トルションチューブの上下:上図のAとBの面積はほぼ同じであり、 橋自重によるねじれは端部では釣り合う。

橋中央ではaの方向へ、橋端部ではbの方へねじれようとするが、aとbは向きが反対で、 ほぼ同じ大きさの力なので互いに打ち消しあい、橋端部ではねじれは生じない


■アテネの屋根に転用

本橋の完成より数年後にカラトラヴァは アテネオリンピックスタジアムの設計を行うことになりました
そのアテネの屋根は、ちょうど本橋をふたつ、観客席の上に載せたようなものです。

つまり両者はその用途、規模は全く異なるものの、全く同じ構造システムなのです。

考えてみよう!


  • 色々な吊りケーブルの配置と、そのときのアーチの形を考えてみよう!


  • 一番キレイだと思うアーチのプロポーション:幅-高さの比率は?

   

アテネ:オリンピックスタジアム
© Athen Olympic Comittee

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'07/09/07  upload

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