グルジアのシェル構造の歩道橋

西アジア、グルジアに建つ、シェル構造の歩道橋

“PEACE BRIDGE”:ピースブリッジ

グルジアの首都、トビリシ のクラ川に架かっています。

橋の支持構造としてシェル構造を利用していることが特徴です。

床を支える構造にアーチやトラスなどの線材ではなく、面材=シェルを用いるのは珍しいものです。

なめらかなサインカーブを描くシェル。どことなくクジラなどの動物が舞い降りたかのように思えます。

 

そのシェル屋根より、吊り材で床面が吊り下げられています;

シェルにはガラスが貼られ、床面の上に架かる屋根となっています。 

シェルの詳細。

ピースブリッジのwikipedia(英語)

このような屋根付き橋をカバードブリッジcovered bridge と言います。

覆われた(=covered)橋、というワケです。

カバードブリッジの場合、

A:本橋のように屋根部も橋の主要な支持構造となっている場合と、

B:床重量は床桁が支え、その上に構造体ではない、単なる屋根をかける場合

との2通りがあります。

もし仮に屋根が破壊された場合、上記Aの場合、橋が落ちてしまいますが、Bの場合は屋根は言ってみれば単なる飾りですから、橋が落ちるようなことはありません。


ちょっと話がズレますが、「自動車」の構造も上記の2通りがあります。「セパレート形式」というものと「モノコック形式(またはアンセパレート形式)」の2つです。

前述Bに相当する「セパレート形式」は、フレームと、その上に乗る(タイヤより上にある)ボディに分かれます。フレームとボディに「分かれる=セパレート」ということです。

フレームはタイヤを束ね、自動車の主要な構造となって重量を支えます。客室(キャビン)を守るボディは言ってみれば単にフレームに乗っているだけです。フレームは橋の床桁のようなもので、それに単なる屋根のようなボディが乗っているイメージです。

下図で図化されている部分が車を支えるフレーム、その上に乗る、ぼやかして書かれている部分がボディです

前述Aに該当する「モノコック形式」「アンセパレート形式」は、上記のボディ部とフレーム部がどちらも一緒に車の構造となっているもの。ちょうどこの”peace bridge”の屋根が床を支えているのと同じようなものです。

モノコックとはモノ=「一つの」 コック=「貝殻(仏語)」という意味です。

貝殻は英語だと「シェル」ですから、モノコックは「一体となったシェル構造」、と言ってもいいかも知れません。


もし仮に「セパレート形式」の車にトラックが突っ込んで、ボディが壊れたとしても、このタイプではフレームが重量を支えるのですから、あまり支障ありません。牽引などすれば、何とか走らせることができます。

しかし「モノコック形式」タイプに同じことが起きると、構造体そのものが壊れる、という訳ですから、もう自分で走ることはできません。トラックの荷台に積んでもらうしかないのです。

逆に次のようなこともあります。

セパレート形式はフレームのみで重量を支えるのでフレームの強度、剛性を上げるにはフレームを強くするしかありません。

しかし、フレームはキャビンの下で納めなければなりませんからフレームを高くするわけにもいかず、 フレームの板厚を上げるなど、補強する場合の方法は限られています。

しかしモノコックの場合、重量を支えるのは車全体ですから、剛性を上げる場合、車の構造体としての高さは車全体の高さで考えることができます。よって効率的に補強することができ、セパレート式より有利です。

このことはカバードブリッジも一緒です。床桁のみで強度を上げるか、屋根も含めた全体で強度を上げるか、ということです。

このようにセパレート式、モノコック式とも一長一短があります。 

コチラのwikipediaのページ:「自動車の構造」が参考になります。 


話は戻ってピースブリッジ。 

こちらは施工時の様子。川の上でなく普通の平地で行なっていることより、まず全体を平地で組み立てて、川の上にクレーンで吊り上げたのでしょうか。

 本橋の設計はイタリアのデザイナーMichele De Lucchi ミケーレ・デ・ルッキ 氏。

 同氏はグルジアの大統領府、内務省の建物もデザインしたとのこと。

構造設計者は不明。。

コチラのページにピースブリッジのキレイなフォトアルバムがあります。


グルジアは’91年に今は亡きソヴィエトから独立。カスピ海と黒海に挟まれた位置にあります。古くから交通の要衝だったとのこと。

逆にそのような地の利があることから戦火が絶えなかったようです。

“peace bridge”の名に重みを感じます。

そのグルジア、つづりはGeorgia ですから英語ではジョージアと読むそうです。グルジアとはロシア語読みだとか。

グルジア国家としては旧名ジョージアではなく新名グルジアで呼んでくれ、と呼びかけています。

「あの人とは別れたんだからもう旧姓で呼ばないで。思い出しちゃうじゃない」というワケ。

最初にこの橋の記事を見た時、アメリカのジョージア州にある橋だと思ってました。

しかし橋を歩いている人たちのお顔がどうもアメリカ人とは思えない。

GEROGIAが「グルジア」という国だと分かるのにダイブ時間が掛かりました。

日本とはかなり縁がない国ですね。TVにもほとんど出てこない気がします。

サッカーの日本の対戦相手、として出てくる程度でしょうか

何処にあるかすぐに答えられる人は少ないのでは。

ロンドン、パリなんかに比べ、日本人からは心理的にかなり遠いところ。

そんな所で人々は毎日どのような生活を送っているのでしょうか。


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