近代建築の巨匠、エーロ・サーリネンの代表作、TWAターミナル空港にコンバージョン(転用)の話が持ち上がっています
TWAターミナルビルはNY、ジョンFケネディー空港に作られた、エーロ・サーリネンの代表作のひとつ。鳥が羽を広げたような、飛翔をイメージさせる空港建築の傑作です。
正式名称はJFK空港ターミナル5、通称「IDLEWILD:アイドルワイルド」と呼ばれます。
かつてはTWA:トランスワールド航空の本拠地でしたが、同社は経営難のため別会社に吸収合併されて消滅してしまいました。そのため、現在は格安航空会社ジェットブルー航空の本拠地となっています。
TWAビル自体はそんなこともあって、現在は長らく閉鎖されています。
この旧TWAビルを、JFK空港全体を管理するNY港湾局が「ホテルのエントランスロビーにしたら? 」と提案してます。
どういうことかというと。。
「旧TWAの脇におしゃれなデザイナーズホテルを建てて、TWAターミナル自体はそのホテルへのエントランスロビーにしたらいいんじゃないの?クールでヒップでよさげじゃね?」
このアイデアに「乗っかる」不動産会社を目下探しているそう。
なんとも大胆なアイデア。もし実現したらこんなに豪華なエントランスロビーもないでしょう。
ところで、実際にホテルを建てるスペースは。。。?下写真中央のTWAビルの脇にホテルを建てる?ん?ちょっと狭すぎでは? (^^;)
ステルス戦闘機のようなTWAビルの周囲を取り囲んでいるのは増築されたターミナルビル群。TWA君、なんとも窮屈で居心地悪そうです。
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エーロ・サーリネンはフィンランドに生まれ、その後アメリカへ渡り活躍した建築家。51歳で早逝しましたが約10年強の間に多彩な建築群を生み出しました。
シドニーオペラハウスの設計コンペに審査員として参加し、落選案としてゴミ箱に入っていたウッツォンの案を拾い上げ、それが当選案となった、というエピソードは建築界の語り草。
TWAの他にもその屋根形状から愛称「ハンモック」と呼ばれるワシントンダレス空港や、エール大学ホッケーリンク(体育館)などの構造表現的な建築、また打って変わってタテヨコの端正な姿が美しいビル建築:ディアカンパニー本社ビルなども。
丹下健三氏はサーリネンと同年代であったため、氏を良きライバルとしたそう(実際、交流があった)。
代々木体育館とホッケーリンク 、(有楽町にあった)旧東京都庁舎とディアカンパニー本社ビル がそれぞれ形態が類似しているため、「丹下センセイはサーリネンをマネした」と良く言われます(おそらく単なる噂)
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TWAターミナルは1962年に完成。まだ飛行機に乗るのがリッチ層の特権だった頃です。
構造的には下記解説図のような片持ちシェル構造となっています。
上から見ると4つ葉のクローバーのような形をしており、それぞれが片持ちシェルになっています(右写真)。
立面図:構造概念図 | 組体操:扇と同じ仕組み |
W:屋根重量
MT:シェルが倒れようとする力:転倒モーメント MT=W×L
左右のシェルはそれぞれMTで外側に倒れようとする。
それを引き止めるためにシェル交点には引張力Tが働くからそれに耐えられるだけの鉄筋で引っ張る。 T=MT/H つまりMT=W×L=T×H
自作のカンタンな模型(笑)。中央がくっついていると形をキープ出来るが、それが離れると左右に倒れる=中央には引張力が働いている
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ところでこのTWA,シルエットがシドニーオペラハウスと似ていることをご存知。。?
複雑に見えるオペラハウスですが、実は右図のユニットの繰り返し。
オペラハウスも大局的には片持ちシェル構造であり、TWAターミナルとは構造的に同じ仲間なのです。
サーリネンもウッツォンのマネを!? 結局、建築界はマネばかり!?
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近代建築の傑作のひとつ、TWAターミナルビル。何とか「取り壊し」は免れているものの、まだまだ「老後の人生」の行方は不明のようです
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