コチラの写真、当サイトのテイストとちょっと違いますが(^^;)先日TVで放送されていたもの。
つい先日、お昼の日テレの「ヒルナンデス」にて放送されたもの。
「人間空中ブリッジ」というもので、お互いに輪になって寝そべって寄りかかることで椅子なしで空中に浮いた状態になるというものです。
年末年始の、家族で愉しめる超魔術!ということでした。
平愛梨ちゃんや、鈴木菜々ちゃんたちがキャーキャー言いながら寝そべってます(笑)
楽しそうなコチラ、力学的には”Reciprocal Structure”レシプロカル構造というものです。
こっちの写真がスゴイですかね ↓
「人間イス」と言えそうです。イスいらずで家具メーカーは商売上がったり!?
この構造、お互いに寄りかかることで立体的に釣り合いが保たれるものです。
reciprocal は相互作用、互助、などと訳されますからReciprocal Structure は相互作用構造、もう少し砕いていうと「相持ち(あいもち)構造」などということができます。
上の写真で、Aさんは後ろのBさんに支えられ、B さんはさらに後ろのCさんに。。となり、最後にZさんはAさんに支えられ、と終わりなくエンドレスに支えられています。
お互いに支えあっている様はある意味、人間社会の縮図、あるいは経済でのお金の循環にも似ています。非常に暗示的です。
建築では下図のような組み方をして屋根などに用いることができます
コチラ ↓ は丸太で組まれた場合の頂部を見上げたもの。
互いに接するところが美しいラセンを描き、吸い込まれていきそう。
なかなかキレイです
こんなカンジですね ↓ 小学校の運動会の「騎馬戦」を思い出します。
さてこの相持ち構造、1つの部材が壊れると、即座に全体が壊れてしまいます。構造用語で不静定次数が低い構造、と言います。
冒頭のTV写真でも、一人がへばると、あっと言う間に全員が崩れ落ちてしまいました。
よってそうならないように対策をとっておく必要があります。
その対策の例としては、
①余裕のある断面としておく(応力度を低くする) とか、
②相持ち構造とは別に、万一のためのバックアップ構造=別のものを仕込んでおく、
などがあります。
このレシプロ構造、近年ではArup のセシルバルモンドが多用しています
上図右写真は平面的な構成で使ったもの。短い材で空間を覆える特徴があります。
コチラは構造原理を示す写真↓
上図の3本のナイフの絵より分かるのですが、相手との接合部はただ乗っていれば事足ります。構造的に言うとせん断力と軸力のみを伝えればよく、ピン接合で事足ります。
これがもし、3本のナイフが1点で交わっていた場合、その納まりがタイヘンであるばかりでなく、曲げモーメントを伝える必要があります。剛接合じゃないとダメ、ということです。
最悪、立体トラスなどで用いられるボールジョイントなどが必要となるかもしれません
しかしこの相持ち構造の場合、部材節点がズレていますからそのような煩雑さが無いわけです。
「納まりがタイヘンだからちょっとズラそう」というような(本工法の)採用の仕方があるということです。
さてこの相持ち構造、実現作としては日本だと石井和紘氏設計の熊本県、清和文学館が有名です。構造設計は木造が得意なベテラン構造設計家、浜宇津正氏。
劇場の屋根構造として円形のスパイラル状構成のものと、四角形の平面的構成で相持ち構造が用いられています。
真ん中写真の円形のものは、時計回りの相持ち梁組が見えますが、前述の崩壊への備えとして屋根の中にもう一つの、反時計回り方向の相持ち梁が仕込まれており、ダブルらせんの相持ち梁となっています。
この相持ち構造に関する書籍として、ズバリ下記の本が出版されています。(洋書)
“Reciprocal Frame Architecture”
応力状態など構造の専門的な内容を述べ、実例の紹介として上記の清和文学館や故木島安史氏の建築などが紹介されています。
著者は来日して石井氏の案内のもと多数実例を取材。日本は「相持ち構造の故郷だ」とまで述べています
美しくラセンを描く姿が、互いに支えあう人間社会を連想させるレシプロ構造。
設計には注意が必要ですが、その労力を大きく上回る結果が得られる、価値あるストラクチャーです。
他にも”Reciprocal structure” で画像をググってみてください
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