中国では「世界最大」「世界最長」の言葉はありふれたものになっていますが、さらに新たにそのタイトルがひとつ増えそうです。
まもなく開港する北京の新しい空港。
Daxing(ダシン)International airport、北京大興(だいこう)国際空港です
■旅行者急増で裁き切れない!
今回新築するこの空港。元々北京には国際空港=「北京首都国際空港」がありました。特にかつての北京オリンピックに備え、本空港には3つ目のターミナルを増築していました。コチラはノーマン・フォスター事務所のデザイン。
しかしそれから10年と経たずしてもうそのターミナルでは増えゆく旅行者をさばききれなくなることが明らかとなってしまいました。
このことから政府は新しい別の空港を建設し、旧空港と「2本立て」でさばいていくことを決意しました
■六肢の鬼ヒトデ
この巨大な空港をデザインすることとなったのはご存知Zaha Hadidザハ・ハディッド。またサポートとして空港のスペシャリスト、ADPI:アエロポール・ドゥ・パリ・アンジェニエール(パリ空港公団技師団)、中国のローカルアーキテクトが協力しています。
ADPIはかつて空港建築の名手、ポールアンドリューが在籍していました。
さてこのダジン空港。
パッと見で目につくのは星のように中央から腕が伸びた構成。
6本の腕がヒトデのようです。
全幅はおよそ1キロ!
火星から地球侵略のためにやってきた巨大鬼ヒトデ!?
6本の「腕」のうち、アプローチ道路で分断された腕は管理部門(上写真の左下)、要するに空港従事者のための施設。
偶然か否か、中国の国旗と同じ色。
また同国旗には幾つも★がありますしね。。。
偶然でしょうか。それとも小市民の邪推でしょうか。
本案のデザインは空港利用者の歩行距離を最小化することに注力されています。
通常の空港設計では幾つかの建物が敷地内に点在、分散する構成がお決まりなのですが本案ではそうとはせず、建物中央から腕が四方八方に伸びる構成としました。
また一般の空港では地下鉄空港駅は空港ビルから離れた所となり、少なからず歩かされるものです。
しかし本空港では★印の中央、ヒトデの「胴体」の真下に停車し、ヒトデの腕に80箇所ある、どの出発ゲートへも600m=歩いて8分でたどり着けるようになっています。
■STRUCTURE 「光の洪水」
屋根構造の設計を担当したのはARUP.
一番特徴的なのはトップライトと融合した曲面状の柱。
このようなものは通常FUNNELファネル=ろうと、じょうご状と呼ばれます
光がドバーっと滝のように降り注いでいるかのようです。
見事な表現。
右写真(クリックで拡大)より、柱の下部は鉄骨でかなり補強されていることが分かります。また屋根は立体トラス状であることが分かります。
柱の下部はデザイン上はできるだけ小さくしたいですが、そこに一番力が集まります。
意匠と構造で激しい攻防があったでしょう。
この柱、ただのまっすぐの柱とはデザイン力、表現力がケタ違い!
雲泥の差。月とすっぽんぽん!です。
あ、すっぽんか。間違えました。
月夜の変質者ではありません(©銀シャリ)
ン、コホン。
。。で。この柱。よく知られたものはシュツットガルト駅計画。
クリストフ・インゲンホッフェン氏による設計。
構造コンセプトはフライオット-氏。
そのコンセプトはズバリ、穴を開けたビンゴカード。
有機的な素晴らしいデザインの本案を思いついたとき、オットー氏は思わず「ビンゴー!」と叫んだとか。(ウソ)
目下、鋭意建設中。ザハは鉄骨ですがこちらはRC
構造の実施設計はゾーベック。
シュツットガルトも北京も同じですが
「柱」の足元が丸くなることでシェル構造となります。
これにより荷重載荷能力が大きく上がります。
自然界のネギニラと同じ。(右下)
このような「柱」は、割と最近、使われるものです。
ザハも小案件で使用したことがあります。
。。で、この柱、なんて呼ぶの?(・□・)
壁のような柱:壁柱をウォーラム(WALL+ COLUMN=WALLUMN)と言った人がいますが、それに倣うとシェラム(SHELL+COLUMN=SHELLUMN)。。でしょうか。。
んーいまいちゴロが良くない。
ゴロゴロするな~
ん?え?あっ、そう。
ニュースなどによると「Cコラム」と言うそうです。
なるほど。
柱=トップライト部はその様になっており、
建物中央、ヒトデの「胴体」=中央付近の屋根の骨組み。
最適化ツールでトラス成、パターンを生成させたとのこと。
ど真ん中には梁は入らず放物線状にカーブして離れていく構成となっています。
FLライトのグッゲンハイム美術館の屋根梁を思わせます
。。で、上記のトップライトの真下、ヒトデの胴体のところにはなんと吹き抜けを渡るアーチ橋が2つも!えっそうなの?
建物内にアーチ橋なんて初めてみました(・o・)
下写真が示すように橋軸にナナメにアーチが架かっています
屋内で免震(後述)ですから風も地震も考えずに済むので設計は楽だったでしょう。
まあアーチは構造要素というよりビジュアル要素の意味合いが高いのかと。
建物基礎としては空港の真下を貫通して通っていく250km/hの高速地下鉄の振動、および日本同様の地震のリスクを考え、1000基の免震装置の上に乗っています
ヒトデの腕の側面、ガラス壁のマリオン。
こんなマリオン初めて見た!(>_<)
アーチを横倒しにしたような状態で、端部を上下にV字状に枝分かれさせたようなもの。
■ハイテクの極み
真紅の屋根は太陽光パネル。
空港内ではAI顔認証によるペーパーレスチェックインシステムを採用。
また滑走路では「バードストライク」の原因となる鳥や、不意に入ってきたドローンなどに備え、イスラエル仕込みのAIソフトウェアモニターシステムが睨みを利(き)かせます。
このように現況のあらゆる技術を盛り込んだハイテクの極みの空港となっています。
■Zaha、極東の国家プロジェクト
で。。この新空港。。お値段いかほど。。?
え?総工費は120億ドル= 1.4兆円 !いっちょう!ほげ~!
同じくザハがデザインし大モメした我が日本の2500億の旧国立案がカワイく思えます(- – )
本空港と新国立。設計はほぼ同時期だったようです。
不慮の死となる間際、正に我が世の絶頂、小太り飛ぶ鳥を落とす勢いだったマツコデラ、じゃなくてザハ・ハディッド。
彼女によるアジア極東2国の国家的プロジェクト。
新国立の方は安部首相の政治的カードにされて「廃案」、お払い箱となってしまいましたが当のザハは
「ふんトキヨ(tokyo)が何よ。アタシにゃー北京があるから痛くも痒くもないわ」
と思ったのかも知れません。
けどまあその1.4兆円には滑走路、地下鉄なども含んでいるでしょうから建物本体をまあ大雑把に3割だとすると。。。4200億。ありゃ、新国立とそんなに変わりません。
まあこんなに高額でも13億の民から集めた国家予算があれば大したことないのかも知れません。
かと思ったら中国の国家予算、歳入はなんと日本のたった2倍程度!
えっそうなの?そんだけ!?
。。。ってことはもしかして逆に日本の税金が高いってこと?やっぱそうか。道理で最近色々取られると思ってたんだよー。
今オレ年収1億だから単純計算、消費税だけで800万取られるんだよね~
いかん、暑さでボケたせいかウソ800言ってしまいました。
なお1.4兆円は高額ではありますが、大都市ロンドンのヒースロー国際空港では3番目の滑走路を作るだけで170億ドル=2兆円!かかったとのこと。それに比べればかなりおトクな買い物なのかもしれません。
■アジアの「洪水」空港
開港は間近。
まずは第一フェーズとして滑走路4本、年7200万人をさばくように作られており、その後滑走路を7本に増やし、最終的に年1億人!が利用する空港となる予定です
「一番機」はまもなく、9月30日に飛び立つ予定。
この空港見るだけのためにでも北京に行ってもよさそうです。
空港といえば最近シンガポールにもその名もズバリJewel=宝石という名の空港施設が完成しています。
ドーム状の建物の中心に巨大な滝があるものです。
文字通りの水の洪水と、光の洪水。
北京経由でシンガポール行ってマリナベイのスイート泊まって帰ってくるか~( ´O`)
年収1億だから安いもんだよ~(ウソ八百)
本空港の概要を解説するYOUTUBE。
動画制作の「B1M」は、建設関係のYOUTUBE 動画を作るチャンネルで、他にも興味深い動画がいくつもあります。
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