イル・グランデ・ビーゴ
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船を吊り上げるクレーンがモチーフ レンゾ・ピアノ / オブアラップ(ピーター・ライス) / ジェノヴァ
Il Grande Bigo / Renzo Piano / Ove Arup (Peter Rice) / Genoa
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イタリア、ジェノヴァの港に建つイル・グランデ・ビーゴは1992年に開かれた 国際博覧会のシンボル施設で、船を運ぶクレーンをデザインモチーフとした大規模な吊構造となっています。

■プロジェクト概要

探検家クリストファー・コロンブスの生誕の地である イタリア、ジェノヴァ は、 アメリカ大陸発見から500年となる1992年に、それを記念する博覧会:「コロンブス大陸発見500年記念国際博覧会」 を開くこととしました。 本建物はこの中心施設として計画されたものです。

イル・グランデ・ビーゴとは「大きなクレーン」を意味し、 かつてこの港に林立していた貨物船のクレーンをデザインモチーフとして レンゾ・ピアノ氏が設計したものです。

海上の島から花のように立ち上がるシンボリックな葉巻状の白い支柱:マストは 広場上に架かる膜屋根と、 港のパノラマビューを楽しむことが出来る展望エレベータを吊り上げています。 (写真2)

■膜屋根

港から半島状に突き出た広場:お祭り広場を覆う膜屋根構造は次のようになっています。(図1,2)

まず広場の両外端には先細りの斜め柱が立っています。この柱上端に白いパイプアーチが取り付けられ、 そのアーチから屋根となるテフロン膜材が吊り下げられています。パイプアーチはマストへ、 吊りケーブルにて吊り上げられています。

ケーブルはさらに後方に伸び、2本のマストを経由して最終的には 海中に設けた基礎へアンカーされています。  (図2)

吊ケーブルと斜め柱はそれぞれ細いということと、褐色に塗装されていることからいずれも視覚的に印象が薄く (認視しにくく)、あたかも白い飛行物体が空中に浮いているかのように見えます。 (写真1)

膜屋根の長手方向には各アーチを結ぶケーブルがあり(図1)、 これにより横方向の安定が確保されています。 ケーブル両端は、やはり斜め柱にて固定されています。

図1 膜屋根の構成全景

図2 吊り屋根の構成と力の流れ


a: 斜め柱  b: アーチ   c: 吊りケーブル
d: アーチのアンカーケーブル     e: マスト
f: ステイケーブル     g: マストが立つ”島”

1: 膜屋根の吊り上げ力
2: アーチを定位置に固定するアンカー力
3: 吊りケーブルを引き上げ、マストの倒れ力を引き止める
4: ケーブルの反力によるマスト圧縮力
5: マストの全鉛直力
6: ステイケーブルのアンカー力


■ 張力導入装置の素晴らしい納まり

アーチ端のケーブル定着部は複雑な構造的要求を非常にシンプルな方法で解決した、素晴らしい納まりとなっています。 (右写真図3)

アーチ端部には左右から、膜端を引っ張る境界ケーブル計4本が接近してきています。
膜に必要な張力を保持しておくにはこの境界ケーブルをある張力で引っ張る必要があり、 その張力を施工時に導入しなければなりません。

4本はそれぞれ立体的な角度で空中を走ってきていますが、これらを1本ずつ引っ張って どこかにアンカーさせるのでは大変で、またディテールも複雑となります。

これに対して、次のようになっています。

まずこの4本のケーブルを穴のあいた筒材:ポッドに止めます。

次にこれをアーチ端から伸びる棒材(ロッド)に差し込みます。

そこに油圧ジャッキをかませ、必要な張力となる位置までポッドを押し込みます。(図3)

所定の位置に達したらロッドにポッドのストッパーとなるナットを締め、ポッドを固定します。 これでケーブル4本に張力が導入されます。

これだけだとロッドはケーブルにより上向きに引っ張られようとしますので、これを引き止める、 斜め柱下端から伸びるテンションロッドでポッドを引き下げ、固定します。

つまり4本のケーブルの張力導入がたった1個のポッドをジャッキで押し進めるのみで完了します。 そして巧みな力の釣り合いが保たれています。

非常にシンプルながら効率が良い、卓抜したアイデアと言えます。

■岬の心地よい屋外空間

レンゾピアノピーターライスのコンビによりデザインされたグランデビーゴは、 ジェノヴァ港の岬に、地中海の強い日差しを防ぎ、海風が通り抜ける心地よい屋外空間を提供しています。

アーチ端部のディテール: 張力導入装置

側 面 図                   A-A'(平面)

図3: 張力導入装置:ポッドの働き


a: アーチ   b: 膜境界ケーブル
c: ポッド
d:  ロッド  e: テンションロッド
f:  斜め柱  g: アンカーケーブル

ポッドをロッドに押し込む(1)ことで境界ケーブルに張力が導入される (2)
ロッドはケーブルにより逆に上向きに引っ張られるのでテンションロッドで下に引き下げる(3)

関連リンク

Renzo Piano Building Workshop

ピアノ氏の公式サイト

Met@lica

イタリアの建築他ポータル。ビーゴの施工写真など

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'05/05/06  更新
'04/10/23  upload