東京国際フォーラム ガラスホール : その2

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ラファエルヴィニオリ / SDG 他
Tokyo Intl. Forum Glass Hall / Rafael Vinoly / SDG

■ サスペン・アーチ

右図のように、アーチとサスペンション(吊り)ケーブルを組み合わせた構造をサスペン・アーチ構造といいます。

アーチとケーブルの水平力:アーチは荷重により外に開こうとし、ケーブルは逆に内側へ近づこうとする: が打ち消しあい、支持端に水平力が生じないことが特徴です。

この構造はタイド・アーチ:Japan Bridge のページ参照: と似ていますが以下の点が異なります

すなわちいずれの場合も下弦材:ケーブルまたはタイが、アーチのスラストを打ち消していることは同じですが、 サスペンアーチの場合はケーブルも鉛直荷重の一部を負担してます。 逆にタイはスラストを負担しているのみです。

つまりサスペンアーチはアーチ + ケーブルで荷重を負担しています。 これよりサスペンアーチはタイドアーチより荷重負担能力が大きいといえます。

しかし、実際には、サスペンアーチはこの図のような形態のため美的に少々そぐわないこと(下さがりのカーブが、もったりした印象を与える)や、タイドアーチの場合、 タイのレベルをフラットな屋根や橋の床面とできる利点より、タイドアーチの方がよく用いられます。

またアーチとケーブルを結ぶ束材は、サスペン・アーチでは、 アーチ、ケーブルがそれぞれまっすぐになろうとして近づくのを防ぐため、つっかえ棒として働く圧縮材の必要があります。

しかしタイドアーチではそのような作用がないため引張材(細くてよい)で済みます。

サスペン・アーチ(上)とタイド・アーチ(下)

2者の比較:支持部での力の釣合い

C:アーチ圧縮力  T:ケーブル引張力
R:支持点での鉛直反力=全作用荷重

サスペンアーチ(左)に比べ、タイドアーチ(右)はアーチのみで鉛直力を負担するため、 アーチ軸力 - 図中矢印長さに相当 - は大きくなる。
これはひとえにタイが水平なために鉛直力を負担できないからである。



■ 無数のリブは何のため??

フォーラムの屋根の「船底」を形成するリブ。 右図のように半円形をしていますが、いまさらながらこれは何のためにあるのでしょうか。 そしてどうしてこういう形なのでしょう??

まずフラットな上面は、ガラス屋根を直接受ける梁として機能しています。これよりこの梁=リブはガラス境ごとに設けられます。

次にこの屋根重量をメイン構造であるアーチ、サスペンションケーブルに渡さねばなりません。よって必然的に梁端は アーチ、ケーブルと結びついた形態となります。

次に、このアーチ、ケーブルですが、これらは鉛直力のみでなく、地震時に水平力にも抵抗できるよう、斜めに配置されています。 これよりアーチ、ケーブルは3次元空間を複雑に飛ぶ空間曲線を描きます。

本構造、サスペンアーチは、荷重を受けると前述の通りアーチとケーブルがくっつこうとするため、これをそうならないよう、 空間の望む位置に配置、固定しておく必要があります。リブはこの役割を受け持っています。

まとめると、
1.屋根ガラス面を受けるとしての役割
2.上記荷重をメイン構造へ伝達する荷重伝達材
3.メイン構造体を空間の所定位置に保持する、部材保持材
といった、多機能部材であることが分かります。

そしてその形は、上はガラス受けのためフラット、下はアーチ、サスペンション、タイケーブルを結び、キレイになるよう なだらかに結ぶと曲線=半円形になった、というわけです。

さらにはそれをガラスピッチごとに並べ、柱に近づくほど屋根幅も小さくなりますから半円も小さくなり、 結果的に船底のような形態となったわけです。

このように船底形態は恣意的な形アソビでできた形ではなく、 構造により、半ば必然的に(あるいは結果的に)出来たものなのです。





リブ

A:アーチ  B:サスペンションケーブル
C:タイケーブル
リブ各部は生じる曲げモーメントに抵抗できるよう、上下にフランジが付いたH型の断面をしている

リブと各部材の構成

アーチ、ケーブルとも空間を3次元的にカーブして走っている。

リブ側面図とその役割

A:ガラス重量を受け、それをアーチ、ケーブルへ渡す
B:アーチ、ケーブルがそれぞれまっすぐになろうとし、近づくのを つっかえ棒として防ぎ、位置を保持する



'05/07/30  upload