ロ−ヴェントール歩道橋

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「トランポリン」に乗った通路 シュライヒ・バーガーマン / シュツットガルト
Lowentor bridge / Schlaich Bergermann / Sttutgart

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シュライヒ氏設計による歩道橋:ローヴェントール橋は、 トランポリンの上に通路が乗せられたかのような遊び心たっぷりの歩道橋です。

■ケーブルネットにのった歩道橋

本橋はドイツ、シュツットガルト市内の 4車線の大通りの上にかかる歩行者専用橋です。

道路の上にケーブルの網:ケーブルネットが張られ、 その上に歩行面が乗せられています

その構造ですが、まず、道路の邪魔にならない位置にポスト(斜め支柱)が立っています。
この頂部にケーブルネットの外周をなす太めの境界ケーブルが渡されています。
そしてこの内部にほぼ直行してケーブルグリッドが張り巡らされ、 ネットを構成しています。(図1、2)

ポストはケーブルの力により内側に引っ張られますので、 これに抵抗するようにバックステイで後ろに固定されています。

歩道面はこのネットに立ち上げられた短い束の上に乗せられています。

ケーブルネットは細く、視認しにくいので、 車で橋に近づいてくるドライバーには、まるで通路が宙に浮いているかのように見えることでしょう。


図1. 全体の概形

a:歩道面  b:境界ケーブル 
c:ケーブルネット  d:ポスト(斜め柱) 
e:バックステイ  f:歩道を支える束
g:橋最終部は地面より柱をたてて支持している 

図2. 橋断面全景
a:バックステイ  b:ポスト(斜め柱) 
c:ケーブルネット  d:歩道面 
e:歩道を支える束 

■ケーブルネット

ケーブルネットをよく見ると、ところどころ、垂直の引張材で引き下げられています。 (photogallery参照)
これはナゼでしょうか。

ケーブルネット構造はその性質上、テンション: 引張力だけでその構造が形成されるため、 直行するケーブル群は上下反対方向のカーブを描いて交差する必要があります。 (図3)

このとき、互いに交差するケーブルの曲がり具合(カーブ)がきついほど、 相手のケーブルに大きな力をかけることが出来ます。(図4)

つまりところどころ引き下げることでケーブルのカーブをきつくし、 力の入り方を効果的にしているのです。

■トランポリンの上を歩く

それにしてもケーブルネットで歩道面を支持しようというのはダイタンで、ビックリするようなアイデアです。 揺れたりしないのでしょうか。

実際のところ、本橋の上を歩くと少々上下に揺れます。^^)

しかし歩行者はそれを不具合と感じるのではなく、 むしろその少々フワフワしたカンジを あたかもトランポリンの上を歩いているかのように 楽しんでいるようです。

図3. ケーブルネットは互いに逆向きのカーブをもつケーブルが 直交して構成される

図4. ケーブルの角度の効果

同じ力でも、ケーブルの角度がきつい(右)ほど、大きな力:合力を相手(直交)ケーブルに かけることができるので効果的である。

■ケーブル構造

ケーブル(テンション)構造は、一般的なビル物:ラーメン構造などと異なり、 荷重により大きく変形することが特徴です。

このため構造解析は通常とは異なる手法: 幾何学的非線形法※が用いられ、その設計にはかなりの困難が伴います。
つまりケーブル構造はあらゆる建築構造のなかでも 最もハイテックなものと言えるでしょう。

オブアラップ社のエースであったピーターライスも、ケーブル、 膜を取り扱う「軽量構造部」でその腕を振るいました。

またケーブル構造は解析のみならず、施工やディテール:ケーブル端のジョイントや、 どうやって張力を導入するか、など様々な特異な問題が潜んでいます。

テンション構造の日本の第一人者である日本大学の斎藤公男教授は その困難さを評して「ケーブルには魔物が住んでいる」と言っています。

このケーブルネット橋を日本で実現しようとした時、 何の困難もなしに設計できる技術者は、 日本にもそうはいないでしょう。





※ 幾何学的非線形法:荷重をかけると構造物が変形し、その変形した形態に再度解析モデルを つくり直して解析する方法。
これに対し、一般構造物は、線形解析:微小変形理論:荷重が作用してもその変形は小さいと考え、 解析モデルの形態を変えずに解析される。

関連リンク

Schlaich Bergaermann

本橋を構造設計したヨルグシュライヒ氏の事務所

斎藤公男研究室

日本の空間構造の第一人者、日本大学の斎藤教授のサイト

tensinet

テンシネット:膜、ケーブルなどのテンション構造に関するポータルサイト

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※ローヴェントール橋は含まれていません。

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'06/04/15  upload