ここでは、本サイトのテーマ:構造デザインについてご説明します。 構造デザインとは? |
建築、土木の構造設計の世界において構造デザインという言葉が使われだしたのは、ここ30年位ではないかと思います。 「構造」と「デザイン」という、一見相反する意味の言葉を組み合わせた「構造デザイン」。 この言葉の定義として、次のような点を挙げることができます。 1.構造設計における、問題解決方法が卓抜している(優れている)
構造設計は、他のビジネス同様、ある仕事の中で、与えられた条件を満足するような最適解(ソリューション)を見つける作業です。
というカンジです。 しかしこの例は極めて簡単で、末端的な例です。
これらに対し、その条件が困難であるにも関わらず、トンでもなくすばらしい解決方法を編み出す人がいます。 |
|
|||||||
不可能としか思えない難題に、
|
-限りなく透明な壁面を-
建築家の要望に対し、 |
|||||||
もうひとつは、構造体そのものが文字通りデザインされる場合です。 構造設計の最大の目標は、力学的に合理性があり、経済的であることです。
例えば歩道橋や、商業施設のアトリウムのガラス支持架構など、
直接、一般利用者の目に触れるものについてはなんらかのデザイン的処理がなされる必要があります。 代々木体育館の構造設計で知られる坪井善勝氏は次のような言葉を遺しています。 このような、構造的要求と、デザイン性を両立させた構造の設計(計画)を構造デザインと呼びます。 ※構造的に合理的なものと、美的に満足なものとにはズレがある。 |
||||||||
-屋根のカーブをもっとシャープに!-
|
カラトラヴァの橋は、
|
|||||||
なお、これらの定義において、「耐震性」「安全性」などは、自明である=当然クリアしていることとして、定義の条件から省かれています。 上記で定義した2つには次のような関係、位置づけを見ることができます。 すなわち、1は純粋に構造の領域の問題であることが多いのに対し、 |
1の例: |
・シェル構造とすることで厚さを極端に薄くできた
|
2の例: |
・ガラスの支持梁を、視界を妨げないよう細いケーブルによる構造とした |
なお、これらは起きている領域が異なるだけであって、2の方が
1よりも優れている、 |
また、上の2つを包括するような、次のような捉え方、切り口もあります 3.構造の設計において個性、作家性がある 一般の方などの中には構造設計の中の一業務:構造計算を捕えて、
「構造設計は計算なんだから誰がやっても同じ結果になるんじゃないの?」と考える方もいます。
構造設計、特にその基本設計、コンセプトデザインなどと呼ばれる初期のステージにおいては、そのプロジェクトに対する素案、方向性はその設計者の資質に大きく左右されます。
しかし特にベテランの設計者などはそれまでの経験、バックグラウンドから自分の「型」とも呼べる手法や
得意な方法、又は自身の強い信念を持ち、
これらを基に案、方向性を採用することがあります。 つまりエンジニアリングという科学的、論理的な作業の中に個人の個性の反映が起こります。 これはデザインであるといえます。 なぜならデザインとは、たとえば例として、ある建築家が建物の外壁を「デザイン」する場合、 それはその建築家の「内なる」経験から最良のものを選ぶのであり、主観的なものだからです。 (例外、異論もあるでしょうが例え話のため話を単純化しています) まとめると、本来、客観的:個性の入るはずのない設計作業に個人の個性、主観が反映されます。 このようにして設計された構造物が、その「個性」により魅力を持っているならばその設計は「構造デザイン」と呼ぶことができます。 なおこれにより、その設計者:構造デザイナーによる複数の作品にはある種のカラー、統一性が生じます。
その統一性こそが彼の「作家性」といえます
目で見えるとは作品の外観に現れている、構造形態の統一性などの場合(例:カラトラバ)で、
目で見えないとはその統一性が設計コンセプトなどの抽象的なものの場合(例:セシルバルモンド)です。
長々と書いて来ましたが、「構造デザイン」とは?を一言で言うとすると、下記に集約される気がします。 なお「構造デザイン」という言葉は日本語独特のもので、英語でそれに該当するものはありません。
また蛇足ですが、近年「構造デザイン」という言葉がかなり安易に使われている例が見受けられます。
構造デザインという言葉は、歴史が浅いこともあり、定義は明確でなく、解釈は十人十色です。 ここで述べた定義はあくまで管理人の個人的見解であり、絶対的定義ではありません。 また構造デザインに深く興味がある方は、以上のようなことからぜひご自身でその定義を考えてみることをお勧めします
|
|
'10/12/09 更新 |