'08/10/18
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上海に超高層「上海環球金融中心」がオープン
上海に日本の森ビルが事業主の「上海環球金融中心」:Shanghai World financial Centerが完成、オープンしました。
地上101階、高さは492m!となっています。
画像はgoogle検索で
頂部に開けられた四角の風穴が最大の特徴。
全体は三味線のバチ、あるいは「栓抜き」を連想させる形態です。建物平面形は底部では正方形ですが、
高さが上がるにつれ建物コーナーが削られていき、建物中央付近では6角形、最後には頂部では細長〜い長方形となります。
基本設計は米国のコーン・ペダーソン・フォックス、構造設計は崩壊したWTCの設計で知られるレスリーロバートソン氏。
なお実施設計には日本の組織事務所が協力しています。
構造は、建物中央のEVシャフトなどを構成するRCコアと、建物外部の鉄骨フレームおよびジグザグ状のメガブレース、
そしてコアと外周をつなぐ床面のアウトリガートラスなどで構成されています。
RCコアは頂部の風穴開口の下までで止まっており、よってそこから上は鉄骨フレームだけで飛び出す片持ち柱状の構成となっています。
構造の基本設計をしたロバートソン氏は今や、超高層の構造デザインをさせたら世界で右に出るものはいない存在となっています。
活況のドバイでも引っ張りだこ。かつてNYのWTCを設計した時は若干35歳だったとのこと!
超高層という、組織力なくしては設計できない、マンパワーが命!のような建物も、
基本構想段階では才能ある個人のデザイン力が頼り、というのは興味深い話です。
関連リンク:
ロバートソン氏のサイト
本建物の構造の概要
(ロバートソン氏のサイトより。PDFファイル) 英語ですが構造概要図などが分かります
「上海環球金融中心」のオフィシャルサイト 「超高層」を模したクールな演出のサイトデザイン。ぜひご覧を
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'08/05/10
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東京、西新宿にコクーンタワーが建設中
画像はこちらのサイトや
GOOGLEで
モード学園の公式ページ
日本の超高層のメッカ、東京の西新宿に一風変わったビルが建設中です。
白い表層がいやがうえにも目を引く「モード学園コクーンタワー」です
「コクーン」とは繭(まゆ)を意味し、モード学園=服飾の専門学校で出学ぶ学生にとって重要な素材の一つ:
絹を作る繭をモチーフとしています。
また繭は成長中のカイコを包む殻であることから、
「学生が成長するための繭= インキュベ−ター(孵化器)」としての意味もあるようです
繭模様の内側に教室が配され、その模様の間にある楕円形のガラス壁面部は学生憩いの場の3層吹き抜けのアトリウム。
設計は丹下都市建築設計とアラップジャパン。
タワーの主構造は大きくは2つの要素:繭模様の壁面に配置された外周フレームと、建物中央の中央コアから構成されます
外周フレームは別名ダイヤゴナル(斜め格子)フレームとも呼ばれています。
円形をした建物平面に120度おきに、計3枚設けられています。
これは3角形状の鉄骨ブレースで構成される、比較的硬いフレームです。
これに対し中央コアは主に柱ー梁のラーメン構造で作られ、さらにオイルダンパーが設置された、比較的柔らかい構造体です。
建物のタテ動線であるEV、階段室周りに設けられています。
ダイヤゴナルフレームだけでは建物として硬すぎるため、これを補うように柔らかい中央コアのダンパーが地震力を吸収するよう役割分担されています。
一見ランダムに見える「繭」の模様は、まず規則的な構造体の斜め格子部を白く塗装し、その上にこれと無関係なランダムな線を追加することで、
全体でランダムに見えるようにしたものです。
竣工は今年10月の予定。
巨額の建設費はモード学園自己資金とのこと!
またモード学園は名古屋にも特徴的な超高層:スパイラルタワーを完成させています。
お金は、あるところにはあるのですね。
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'08/01/11
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コープ ヒンメルブラウのBMWヴェルト
かつてのオリンピック開催地として知られるドイツ、ミュンヘン。
F・オットーによるそのスタジアムと、
自動車のピストンシリンダーを模したBMW本社ビルとの間に
コープ・ヒンメルブラウ(Coop Himmelb(l)au)の設計による
BMWの巨大ショールーム施設:BMWヴェルトが完成しています。
構造はドイツで有名建築家御用達のBollinger and grohmann。
最大の特徴は鼓(つづみ)、あるいは女性のトルソー(胴体)を連想させる「ダブルコーン」と呼ばれる、ガラス張りの構造体です。
コンペ時のコンセプト図を見ると、屋根とダブルコーンは滑らかに連続した、優美な形態となっています。
雲のように漂う屋根が滑らかに地上に降りてきて柱となっている、という状態です。
そのダブルコーンの構造は鉄骨によるシングルレイヤーシェル※1です。
ダブルコーンの形態はタテ、ヨコ両方向に曲がった曲面であることから座屈に対して非常に強く、これによりシングルレイヤーでも可能となります。
ダブルコーン以外のところではこの超巨大な屋根はたった十数本の支柱で支持されています。
この屋根形状決定には最近、佐々木睦朗氏の使用で注目されている「構造体自動生成(最適化)プログラム」※2を用いたとのこと。
ただし大屋根内に諸室が納まるため、計算で得られた形態を恣意的に操作したそうです。
建物は一種の、BMWのショールームおよび「配送センター」となっています
施設はBMW車を購入した客にとって、引渡し=納車の場となり、客は新車を手にした喜びを感じながら施設内からそのまま公道へとバージンドライブを楽しむことができます。
屋根を滑らかに湾曲して支持体とするのはひとつの構造的常套手段です。
M・フクサス+J・シュライヒによるミラノコンベンションセンターガレリアも同じ手法になっています。
(詳細はフクサス氏、シュライヒ氏の公式サイトか、 「fuksas milan」 で検索)
ヒンメルブラウはヴォルフ・プリックス他2人による建築ユニット。非直角=鋭角、鈍角の不定形の形態を好んで用います。
※1:シングルレイヤー:
一般的なトラスなどは上弦材、下弦材の2本の材(=層)から構成されるためダブルレイヤー(=2層)と呼ばれる。
これに対し、上弦材のみ、すなわち1層のみしかない構造をシングルレイヤー(単層)と言う。
ダブルレイヤーはその2層間の高さを構造せいとするのに対し、
シングルレイヤーはそれがゼロなので構造形態そのものがカーブする(=シェルとなる)ことで全体で構造せいを確保する。
※2:構造体自動生成(最適化)プログラム
建物形状、柱位置、屋根荷重などを設定すると、その条件に最適な構造形態(構造柱、梁の形態、その取り付く位置など)が自動的に求められる計算プログラム。
これにより求めた形は理論上の最適形態のため、一般に樹木などを連想させる有機的、生物的なものとなる。
関連書籍
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