"Mr.Bridge" カラトラバのイスラエル、アテネでの近作
今や橋のデザインをさせたら世界で右に出るものはいない?ミスター・ブリッジ
とも言えるサンティアゴ・カラトラーバ。
ご紹介する掲示板サイトには、氏の、中東イスラエル
およびオリンピックスタジアムをデザインしたアテネでの橋の写真が掲載されています。
まず上2つはイスラエル。
最初はテルアビブそばの都市ペタ・ティクバにかかる歩道橋で、
本サイトで取り上げたイギリスのトリニティブリッジ
と良く似た構成。
路面はY字型の平面をしており、その3本の交点に中央で折れ曲がる支柱が立っています。
カーブした路面を支持するバックステイケーブルは、トリニティ橋と同じカラトラバお得意の、ねじれた反転配置。
路面は、桁となる白いパイプが路面片側についており、そこから片持ちの鉄骨梁が飛び出ています。
パイプはねじれ力に抵抗するトルションチューブ※として働きます。
一般的には桁梁は路面中央にすることが多いのですが、
最近のカラトラバはもっぱらこの方法です。
こちらのサイトに施工時の写真(スライドショー)があります
※トルションチューブ:
ねじり力=トルションに抵抗する部材、ねじり力伝達材。
次は聖地、
エルサレムに立つ橋。現在同国ではトラム(路面電車)の新設工事が進行中であり、本橋はこのためのものです。
敷地は市街への入り口となる、歴史的にかなり重要な位置にあり、1つのランドマークとなることが期待されています。
さてこちらの橋、トラム路面(歩道付き)は平面的にアーチ状にカーブしており、
この中央に強烈にシンボリックな、真ん中で折れ曲がる支柱が天を突くように立っています。
モデルのように美しい女性が腰を曲げて立っているかのようです。
吊りケーブルはアーチ路面の内側のみを吊っており、こちらもねじれた反転配置。
支柱の倒れを抑えるために「腰」の部分から前方へステイケーブルで引っ張っています(バックステイでなくフロントステイ?)
特徴をまとめると、「斜張橋:アーチ型路面反転ケーブル片面吊り、中折れ支柱フロントステイ付き、モデル風」といった
カンジでしょうか。(なんかの料理の名前みたいです)
施主であるイスラエル市の担当者は「世界で最も美しい橋のひとつになるだろう」と豪語していますが、
あながちウソでもなさそう。
カラトラバ自身は「今まで世界中に橋を設計してきたが、今回ほど誇らしいものはない」と語っています。
完成予定は2008年。総工費約35億円!
こちらも:
イスラエルの地方紙の記事
こちらのサイトも。
最後はアテネの歩道橋。オリンピックのときについでに依頼されたもののようです。
氏の出生作:
アラミーリョ橋のマスト(支柱)をアーチ状に曲げ、バックステイで真下に引っ張ったような形態。
マストのカーブにより、アーチ効果でマスト曲げモーメントが減少し、
効率断面とできる特徴があります。
バックステイが、ステイ本来の役割:マストの転倒防止と、アーチスラスト処理のアーチタイとしての役割を兼用しているのです。
アーチを縦(鉛直)に使うとは、ある意味「目からウロコ」です。
吊りケーブルは橋げたを片面吊り。よって橋げたはトルションチューブ。
「縦アーチマスト、バックステイ付き、けた片面吊り、アラミーリョ風」?
橋梁デザインでは、純粋な「橋梁技術」ではドイツのヨルグシュライヒ氏も引けを取りませんが、
「芸術点」まで考えると、彫刻家でもあるカラトラバの方が勝るようです。
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